精神疾患全般 15.06.2021 読み取り時間: 1 分

精神科領域における評価尺度

 

精神科領域における評価尺度

精神科領域の診断・治療対象である精神症状の変化は、画像検査や血液検査といった定量的な計測機器を用いた測定方法では評価することができません。そこで、精神症状の重症度や治療薬の有効性などを評価するにあたり、可能なかぎり定量的に測定するための評価尺度が数多く開発され、広く用いられています。

各評価尺度は、評価の対象となる症状や関連する症状や事象などを特定し、それぞれを評価するための項目により構成され、多くは各項目に対してつけられた点数の合計によって評価されます。それにより、原理的に定量化が困難とされるさまざまな精神症状が可能な限り数値化されて評価可能となり、さらに評価者間における共通の物差しとしての役割も果たしています。

評価方法には、主に評価者が被検者を面接して評価を行う「面接者による評価」と、被検者に質問票を渡して被検者自身に評価を記入してもらう「自己記入式」があります。前者は、客観的に評価を行うことができるというメリットがある一方で、評価者によるバイアスを避け均一性を保つためのトレーニングが必要です。後者は、被験者に渡した質問票を記入後に回収するだけの簡便な方法で完結することや、判定者のバイアスがかかりにくいといったメリットがある一方で、被検者が自分の事実に基づかない回答をしてしまう可能性があります。

評価尺度の開発にあたっては、評価者間信頼性や試験-再試験信頼性などの評価が行われ、信頼性が十分にあるかどうかの確認が行われます。また、他言語に展開される場合には、翻訳された評価尺度の信頼性を評価するための検討が行われます。

本ウェブサイトでは、精神科領域において用いられている多数の評価尺度の中から、大規模な臨床試験で用いられているものや、実臨床で実施可能なものをピックアップし、その概要についてご紹介します。日本語版が存在するものについては日本語版の妥当性検証論文等の情報も併記してご紹介します。研究論文を読む際、またはご自身で研究計画を立てる際などにお役立ていただけますと幸いです。

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【評価尺度の分類】

このコンテンツでは、評価尺度のカテゴリを以下の3種類に分類してご紹介しています。

 

うつ病等の精神疾患の状態（重症度など）に関する評価尺度

尺度略号 尺度名 評価方法 所要時間
（目安）		 診療報酬点数 詳細
BDI-II Beck Depression Inventory - Second Edition 患者による自己記入式 約5～10分 該当せず 詳細
BE-PSD-J Brief Evaluation of Psychosis Symptom Domains – Japanese version 面接者による評価 約5～10分 該当せず 詳細
CDRS-R Children’s Depression Rating Scale, Revised 面接者による評価 約15～20分 該当せず 詳細
CES-D Center for Epidemiologic Studies Depression Scale 患者による自己記入式 約10～15分 80点 詳細
CGI Clinical Global Impression 面接者による評価 約1分 該当せず 詳細
FAST Functioning Assessment Short Test 面接者による評価 約5～10分 該当せず 詳細
HADS Hospital Anxiety and Depression Scale 患者による自己記入式 約5分 該当せず 詳細
HAM-A Hamilton Anxiety Scale 面接者による評価 約20～30分 該当せず 詳細
HAM-D Hamilton Depression Rating Scale 面接者による評価 約20分 80点 詳細
IDS Inventory of Depressive Symptomatology 面接者による評価／患者による自己記入式 約10～15分 該当せず 詳細
LSAS-J Liebowitz Social Anxiety Scale-Japanese 患者による自己記入式 実施時間 10分程度
整理時間 2分		 80点 詳細
MADRS Montgomery-Åsberg
Depression Rating Scale		 面接者による評価 約20～60分 該当せず 詳細
ODQ Oxford Depression Questionnaire 患者による自己記入式 約20分 該当せず 詳細
PGI Patient Global Impression 患者による自己記入式 約5分 該当せず 詳細
PHQ-9 Patient Health Questionnaire-9 患者による自己記入式 約3分 該当せず 詳細
QIDS Quick Inventory of Depressive Symptomatology 患者による自己記入式 ／面接者による評価 約5～7分 該当せず 詳細
SDS Self-rating Depression Scale 患者による自己記入式 約10分 80点 詳細
SHAPS-J Snaith Hamilton Anhedonia Pleasure Scale日本語版 患者による自己記入式 約5分 該当せず 詳細
SIDAS Suicidal Ideation Attributes Scale 患者による自己記入式 約1分 該当せず 詳細
STAI（Form X） State-Trait Anxiety Inventory 患者による自己記入式 実施時間：10分
整理時間：2分		 80点 詳細
身体症状や副作用、認知機能に関する評価尺度
尺度略号 尺度名 評価方法 所要時間
（目安）		 診療報酬点数 詳細
ASEX Arizona Sexual Experiences Scale 患者による自己記入式 約5分 該当せず 詳細
CPFQ Massachusetts General Hospital Cognitive and Physical Functioning Questionnaire 患者による自己記入式 約2分 該当せず 詳細
CSFQ-14 Changes in Sexual Function Questionnaire-14 患者による自己記入式 約5～10分 該当せず 詳細
C-SSRS Columbia-Suicide Severity Rating Scale 面接者による評価 約15～20分 該当せず 詳細
MEI Motivation and Energy Inventory 患者による自己記入式 - 該当せず 詳細
MoCA-J Montreal Cognitive Assessment-Japanese 患者による自己記入式 約10分 80点 詳細
PDQ-D-5 Perceived Deficits Questionnaire – Depression 5 item 患者による自己記入式 約5分 該当せず 詳細
POMS® Profile of Mood States 患者による自己記入式 全項目版：
回答約10分 採点約5分
短縮版：
回答約5分
採点約5分		 80点 詳細
RAVLT Rey Auditory Verbal Learning Test パフォーマンステスト 10～15分（インターバルを除く） 該当せず 詳細
SF-MPQ-2 Short-Form McGill Pain Questionnaire Revised Version 患者による自己記入式 約2～5分 該当せず 詳細
SSS-8 Somatic Symptom Scale-8 患者による自己記入式 約3分 該当せず 詳細
TSES Toronto Side Effect Scale 面接者による評価 約5～7分 該当せず 詳細
VAS Visual Analog Scale 患者による自己記入式 1分程度 該当せず 詳細
日常生活機能や社会機能およびQOLに関する評価尺度
尺度略号 尺度名 評価方法 所要時間
（目安）		 診療報酬点数 詳細
CD-RISC Connor-Davidson Resilience Scale 患者による自己記入式 25項目：
約5～10分
10および2項目：
約1～5分		 該当せず 詳細
EQ-5D-5L The 5-level EQ-5D version 患者による自己記入式 約5分 該当せず 詳細
GAS-D Goal Attainment Scale for Depression 患者による自己記入式 目標設定時：30～45分
達成度評価時：約10分		 該当せず 詳細
IADL Instrumental Activities of Daily Living 面接者あるいは介護者による評価 約10～15分 該当せず 詳細
PQ-LES-Q Pediatric Quality of Life Enjoyment and Satisfaction Questionnaire 患者による自己記入式 - 該当せず 詳細
PRRS Psychiatric Rework Readiness Scale 面接者による評価 約15～20分 該当せず 詳細
QLDS Quality of Life in Depression Scale 患者による自己記入式 約5～10分 該当せず 詳細
Q-LES-Q Quality of Life Enjoyment and Satisfaction Questionnaire 患者による自己記入式 約40～45分 該当せず 詳細
SBS Social Behaviour Schedule 面接者による評価 約5～6分
（日本語版の場合）		 該当せず 詳細
SDS Sheehan Disability Scale 患者による自己記入式 約1～5分 該当せず 詳細
SF-36 MOS 36-Item Short-Form Health Survey 患者による自己記入式 約5～10分 該当せず 詳細
TRS Tachikawa Resilience Scale 患者による自己記入式 1，2分 該当せず 詳細
UPSA-B University of California San Diego, Performance-Based Skills Assessment-Brief パフォーマンスアウトカム 約15分 該当せず 詳細
WFun Work Functioning Impairment Scale 患者による自己記入式 約5分 該当せず 詳細
WHODAS 2.0 The World Health Organization Disability Assessment Schedule 患者による自己記入式／面接者による評価 36項目版：
約20分
12項目版：
約5分
12＋24項目版：
約20分		 該当せず 詳細
WLQ-J Work Limitations Questionnaire-Japanese 患者による自己記入式 5～10分 該当せず 詳細
WPAI-GH Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire: General Health 患者による自己記入式 約5分 該当せず 詳細
WSAS Work and Social Adjustment Scale 患者による自己記入式 約3分 該当せず 詳細

評価尺度に関するインタビューシリーズ～精神科領域における評価尺度を読み解く

  1. 渡部芳德先生：うつ病診療における患者主観の評価尺度を用いた臨床の実践
  2. 加藤正樹先生：自己記入式評価尺度を用いたうつ病患者の労働生産性評価
  3. 住吉太幹先生：うつ病診療における認知機能の評価と臨床への応用
  4. 渡邊衡一郎先生：抗うつ薬服用患者における主観的な感情面の症状の評価
  5. 菊地俊暁先生：うつ病患者に対する個別的な治療目標設定の意義と治療アプローチの実際

免責事項

本コンテンツは、各評価尺度について引用をもとに要約したものです。掲載する情報には、第三者による情報や他のウェブサイトへのリンクを通じてもたらされる情報が含まれることがあります。ルンドベック・ジャパン株式会社は、第三者が提供する情報や、当社がリンクを提供するその他のウェブサイトのコンテンツは管理しておらず、それらについて責任を負いません。情報に関しては、ページに記載している連絡先へお問い合わせください。

 

本サイトで紹介している評価尺度をカテゴリ検索できます。

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患者による自己記入式

面接者による評価

面接者・患者
双方による評価・記入

パフォーマンスアウトカム

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80点  

算定対象外

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5分以下 

6～15分　 

16分以上

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（重症度など）

身体症状・副作用・認知機能

日常生活機能・社会機能・QOL

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