双極性障害患者では外因死の割合が一般集団よりはるかに大きい

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

双極性障害(BD)患者の総死亡の中に占める外的原因による死亡(以下、外因死)の割合は一般集団よりはるかに大きく、また特に若年患者においては、超過死亡の中に占める外因死の割合が、身体的な原因による死亡(以下、内因死)よりかなり大きいことが、「BMJ Mental Health」に2023年7月18日発表された論文で明らかにされた1

BD患者での総死亡率は一般集団の2倍程度であることが知られているが2、個々の死因による死亡率がどうであるかについては、ほとんど知られていない。Niuvanniemi Hospital(フィンランド)のTapio Paljärviらは、1998年から2018年の間にBDと初めて診断され、かつ2004~2018年において15〜64歳であった患者47,018人を対象に、全国規模のコホート研究を行った。対象者は、1)統合失調スペクトラム障害の診断を受ける、2)65歳になる、3)死亡する、4)2018年末を迎える、のいずれかが生じるまで追跡された。対象者の追跡開始時の平均年齢〔標準偏差(SD)〕は38(13)歳で、女性が57%を占めた。追跡期間中央値は約8年〔四分位範囲(IQR) 7、4〜11年〕だった。BDを除外したフィンランドの一般集団の死亡率を基準として1,000人年当たりの標準化死亡比(SMR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

BD患者の総人年数は377,386人年で、3,300人(7%)が死亡した。一方、一般集団の総人年数は52,144,411人年で、死亡数は141,536人だった。BD患者の死亡時平均年齢は50(SD 11)歳で、65%(2,137/3,300人)が男性だった。61%(2,027/3,300人)は内因死であり、うち最多はアルコール関連(29%、595人)で、以下、心血管疾患(27%、552人)、がん(22%、442人)、呼吸器疾患(4%、78人)、糖尿病(2%、41人)、物質使用障害(1%、23人)と続いた。外因死は39%(1,273/3,300人)を占め、うち最多は自殺(58%、740人)であった。自殺の約半数(48%、353人)は向精神薬の過剰摂取によるものだった。

BD患者での総死亡率は、一般集団の約3倍(SMD 2.76、95%CI 2.67〜2.85)で、内因死の死亡率を計算したところ約2倍(同2.06、1.97〜2.15)となったのに対し、外因死の死亡率は約6倍(同6.01、5.68〜6.34)に上った。BD患者の死亡例の64%(2,104/3,300人)は超過死亡と考えられ、これは外因死の83%(1,061/1,273人)、内因死の51%(1,043/2,027人)を占めていた。外因死による超過死亡1,061人のうち651人(61%)は自殺だった。次に総超過死亡に外因死の占める割合を見たところ、45〜64歳では38%(523/1,369人)だったのに対し、15〜44歳の若年層では73%(537/735人)に上った。BD患者が75歳まで生きると仮定し、15〜64歳で死亡した100人年当たりの潜在的余命損失年数(PYLL)を計算したところ、外因死では9.5年で、これは内因死での5.3年の約2倍であった。

著者らは、「目下、BD患者に対しては内因死の予防に重点が置かれているが、今回の結果からすると、これは見直されるべきだろう。自殺防止は喫緊の課題であるし、特に若い世代での超過死亡を回避するためには、外因死のリスクを減らすこと、またアルコールを過剰摂取させないことをターゲットとする、より良い介入・支援の方法を考えるべきだ」と述べている。(HealthDay News 2023年7月20日)

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参考文献

  1. Paljärvi T, et. al. BMJ Mental Health. Published online July 18, 2023.
  2. Walker ER, et al. JAMA Psychiatry. 2015 Apr;72(4):334-41.