10代のうつ病患者で治療を受けているのは半数以下

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック後も、大うつ病エピソード(MDE)を有する青少年に対する治療には、地域・人種・性別・保険への加入状況による不平等が残っており、特に農村部、黒人、保険未加入者、年長者は治療を受けている可能性が低いことが、「PLOS Mental Health」に2025年8月20日掲載された論文で明らかにされた1

米テネシー大学ノックスビル校のSu Chen Tanらは、米国保健省薬物乱用精神保健サービス局(SAMHSA)が2022年に実施したNSDUH(National Survey on Drug Use and Health)への参加者のうち、MDEを有する12〜17歳の青少年2,283人のデータを用いて、過去1年間のメンタルヘルスサービスの利用状況を、居住地域(大都市、小都市、非都市部/農村部)、人種・民族(非ヒスパニック系白人、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系アジア人、ヒスパニック系、その他)、性別(男子、女子)、年齢(12〜13歳、14〜15歳、16〜17歳)、健康保険加入状況(民間保険、公的保険、その他、複数加入、未加入)、貧困レベル(世帯収入が連邦貧困線の100%未満、100〜200%、200%超)ごとに評価した。研究サンプルを全国の代表と見なせるように、また非回答者の影響を補正するために重み付けを行った上で、多変量ロジスティック回帰により、年齢、性別、人種・民族、居住地域、保険加入状況、貧困レベルを調整して、メンタルヘルスサービス利用(あらゆる治療、専門家による治療、学校ベースのサービス、遠隔医療、薬の処方)の調整オッズ比(aOR)を算出した。

その結果、対象者の19.2%(2,283人)が過去1年の間にMDEを経験していたが、治療を受けたのはわずか47.5%にとどまっていた(専門家による治療39.1%、学校ベースのサービス30.5%、薬の処方25.0%)。多変量ロジスティック回帰分析からは、都市部居住の者を基準とした場合に、非都市部/地方居住者が専門治療を受けるaORは0.60(95%信頼区間0.42-0.84)、遠隔医療を受けるaORは0.65(同0.43-0.98)といずれも有意に低かった。一方、保険未加入者を基準とした場合、加入者が遠隔医療を受けるaORは、公的保険加入者で3.36(同1.26-8.93)、民間保険加入者で3.31(同1.22-8.98)、複数の保険加入者で3.68(同1.08-12.57)と有意に高かった。また、12〜13歳の者を基準とした場合、16〜17歳の者が学校ベースのサービスを利用するaORは0.52(同0.38-0.71)と有意に低かった。性別ごとに見ると、男子を基準とした場合に女子が何らかのメンタルヘルス治療を受けるaORは1.57(同1.11-2.21)、白人を基準とした場合に学校ベースのサービスを受けるaORはヒスパニック系で0.62(同0.41-0.96)、非ヒスパニック系黒人で0.37(同0.22-0.62)、非ヒスパニック系アジア人で0.30(同0.13-0.70)であった。

著者らは、「COVID-19パンデミック下においては、例えば農村在住の若年者では遠隔医療を受けることが容易でなかったなどの格差が存在したが、このような、隅に追いやられた若年者におけるメンタルヘルス治療上の不平等がいまだに続いていることが、今回の結果から判明した。この状況に対処するためには、個々人に合わせた対応策が必要だ」と述べている。(HealthDay News 2025年8月26日)

 

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参考文献

  1. Tan SC et al. PLOS Mental Health. Published online August 20, 2025. doi: 10.1371/journal.pmen.0000388