慢性疼痛を有する若年者は少なからず不安やうつ病を抱える
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
慢性疼痛を有する若年者では、慢性疼痛のない若年者に比べて不安やうつ病を抱えている者が多く、不安障害は3人に1人、うつ病は8人に1人に上ることが、「JAMA Pediatrics」に2024年9月9日掲載された論文で明らかにされた1。
慢性疼痛(3カ月以上継続)を有する18歳未満の若年者は、5人に1人に及ぶとされる2。疼痛は、不安やうつ病を招く一方で、不安やうつ病は疼痛や障害を持続させる要因であるとも考えられるが、不安やうつ病の有病率がどの程度のものかについては不明である。
マッコーリー大学(オーストラリア)のJoanne Dudeneyらは、論文データベースから、2023年4月30日までに発表された、慢性疼痛(腹痛、頭痛、複数部位疼痛など)を抱える25歳以下(平均年齢18歳以下)の若年者における不安やうつ病の有病率または症状スコアを報告した論文を抽出し、臨床的診断(DSM)による、または臨床カットオフ(Children’s Depression Inventory, Spence Children’s Anxiety Scaleなどによる)を超える不安とうつ病のそれぞれの統合有病率を推定した。有病率は事象率として算出し、群間の症状の程度の違いは効果量(Hedgesのg)で計算した。分析にはランダム効果モデルを用い、Joanna Briggs Instituteのチェックリストで報告バイアスの評価を行い、GRADEアプローチによりエビデンスの質の評価も行った。
最終的にメタ解析の対象とされたのは79件の研究で、対象者の総計は2万2,956人、74%が女性で、年齢の幅は4〜24歳、年齢は平均13.7(標準偏差2.10)歳であった。このうち慢性疼痛を抱えていたのは1万2,614人であり、残り1万0,342人を対照とした。
解析の結果、臨床的診断基準を満たす不安障害の有病率は34.6%(95%信頼区間〔CI〕24.0-47.0%、P<0.001、I2=91.41、12件の研究、n=780)、つまり3人に1人で、臨床カットオフを超える不安の有病率は23.9%(同18.3-30.6%、P=0.02、I2=96.06、25件の研究、n=5,355)であった。一方、臨床的診断基準を満たすうつ病の有病率は12.2%(同7.8-18.7%、P<0.001、I2=76.77、12件の研究、n=814)、つまり8人に1人で、臨床カットオフを超えるうつ病の有病率は23.5%(同18.7-29.2%、P<0.001、I2=96.66、26件の研究、n=4,868)であった。
次に、慢性疼痛の有無で不安やうつ病の症状の程度を比較した。慢性疼痛のある若年者4,605人と対照群9,224人の不安症状スコアについて報告した23件の研究結果から、慢性疼痛のある若年者でのプールされた効果量は中〜大で有意であり(Hedgesのg=0.61、95%CI 0.46-0.77)、不安症状は対照群より重度であった。同様に、慢性疼痛のある若年者5,128人と対照群9,248人のうつ病症状スコアについて報告した33件の研究結果から、慢性疼痛のある若年者でのプールされた効果量は中〜大で有意であり(Hedgesのg= 0.74、95%CI 0.63〜0.85)、うつ病症状は対照群より重度であった。
著者らは、「慢性的な疼痛を抱える若年者に対しては、疼痛や障害はもちろん、不安やうつ病のことを忘れてはならない。不安やうつ病が認められた際には、適時心理的ケアを提供し、疼痛がもたらす影響のみならず精神的な状態も良い方向へ導くべきだ」と述べている。(HealthDay News 2024年9月16日)
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