うつ病歴のある人は中高年期に慢性疾患を発症するペースが速い

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

うつ病歴のある人は、同年代のうつ病歴がない人に比べ、中高年期に慢性疾患に罹患しているリスクが高く、また新たな慢性疾患を発症するペースも速いことが、「PLOS Medicine」に2025年2月13日掲載された研究で明らかにされた1

英エディンバラ大学のKelly J. Fleetwoodらは、2006〜2010年にUKバイオバンクに参加してベースライン評価を受けた172,556人(ベースライン時の年齢は40〜71歳、平均57歳)を対象に、ベースライン時のうつ病歴(うつ病の診断を受けたこと)と追跡期間中の慢性疾患発症との関連を検討した。これらの参加者のデータは、プライマリケア記録、入院記録、がん登録、死亡記録と関連付けられており、このうち、プライマリケア記録とがん登録については、少なくとも2016年まで追跡可能だった。対象とした慢性疾患は、血液がん、固形がん、心筋炎、冠動脈性心疾患、脳卒中、1型・2型糖尿病、高血圧、勃起不全、アレルギー性・慢性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、認知症など69種類で、追跡期間は平均6.9(標準偏差1.9)年だった。

対象者の17.8%に当たる30,0770人がベースライン時にうつ病歴を有していた。うつ病歴のある人は、ない人に比べ、ベースライン時に有していた身体疾患の数が多く(平均2.9個対2.1個)、また新たに発症する疾患の数(1年当たり)も多かった(平均0.20個/年対0.16個/年)。発症頻度がうつ病歴あり・なしの双方で上位3位の疾患は、変形性関節症(あり15.7%対なし12.5%)、高血圧(12.9%対12.0%)、胃食道逆流症(13.8%対9.6%)だった。

準ポワソンモデルを用いて、年齢、性別、社会経済的状態(人種や居住地など)を調整し、追跡期間中に発症した慢性疾患の累積数を比較したところ、うつ病歴のある人ではない人に比べて1.3倍の速さで慢性疾患が増加していた(率比1.30、95%信頼区間1.28〜1.32)。ベースライン時の疾患数や生活習慣なども調整して解析すると、うつ病歴ありの慢性疾患の増加ペースは多少は低下したが、それでも有意に速かった(同1.10、1.09〜1.12)。

著者らは、「うつ病歴を有する人は、ない人に比べ、ベースライン時に有している慢性疾患の数が多く、またその後、慢性疾患を新規発症するペースも速かった。既存の医療システムは、個々の病態を治療するように設計されていることが多く、複数の病態を持つ個人の治療には苦労することが多い。このため、うつ病(または他の精神的健康状態)と長期的な身体的健康状態の双方を包括的に管理できるような方策を取ることが強く望まれる」と述べている。(HealthDay News 2025年2月3日)

 

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参考文献

  1. Fleetwood KJ, et al. PLOS Medicine February 13, 2025. doi: 10.1371/journal.pmed.1004532