高齢期のうつ病はパーキンソン病やレビー小体型認知症の前駆症状である可能性

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

大規模な症例対照研究により、パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(LBD)患者では、診断前後におけるうつ病の発症リスクは、対照群である関節リウマチ(RA)、慢性腎臓病(CKD)、および骨粗鬆症(OP)の患者より高いこと、また、うつ病が、将来的にPDやLBDの発症につながる神経変性過程の初期症状である可能性が示唆された。この研究の詳細は、「General Psychiatry」に2025年12月3日掲載された1

PDやLBDの患者がうつ病を合併する頻度は30~40%程度に上る2,3。しかし、PDやLBDの診断前後におけるうつ病の発症率を調べた研究はこれまでほとんどなかった。オーフス大学病院(デンマーク)のChristopher Rohde氏らは、2007~2019年のデンマーク国民登録システム(Danish Civil Registration System;DCRS)からPDおよびLBDと診断された患者1万7,711人(平均年齢74.98歳、女性39.92%)を特定し、PDおよびLBDの診断前後における新規うつ病発症率を算出した。また、年齢・性別・診断年をマッチさせたRA、CKD、およびOPの患者を対照群(最大3対1)として、症例対照研究を行った。患者の内訳は、PDが1万4,636人、LBDが3,075人、RAが1万9,556人、CKDが4万842人、OPが4万7,809人であった。

デンマークの医療システムでは、うつ病患者の大半は一般開業医や個人開業の精神科医の治療を受けるが4、これらの医師は処方箋登録システム(Danish National Prescription Registry;DNPatR)や精神障害に関する登録システム(Danish Psychiatric Central Research Register;DPCRR)に報告しないことが多い。このため本研究では、うつ病の新規発症を、抗うつ薬の初回処方、またはうつ病の診断を伴う精神科の受診や入院のいずれかが確認された場合と見なした。解析では、まずハザード率グラフを作成して、PD、LBD、RA、CKD、OP患者における診断前後のうつ病発症率を可視化した。次に、時間軸を「診断日からの時間」としたCox比例ハザードモデルを用いて、PD患者のうつ病発症率をLBD、RA、CKD、OP患者と比較した。

PDまたはLBDであると診断される前の10年間に、PD患者で13.10%(1,918人)、LBD患者で16.91%(520人)がうつ病を発症していたのに対し、対照群では、RA患者で5.56%(1,087人)、CKD患者で7.82%(3,192人)、OP患者で7.24%(3,460人)の発症に留まっていた。うつ病を発症した患者のうち、診断前に精神科を受診してうつ病と判明した割合も、PD患者で18.87%(362人)、LBD患者で19.23%(100人)であり、RA(17.57%、191人)、CKD(15.35%、490人)、OP(15.00%、519人)患者より高かった。診断後10年間の発症率も、PD患者で7.93%(1,160人)、LBD患者で8.49%(261人)であり、やはりRA(5.07%、992人)、CKD(5.48%、2,240人)、OP(6.09%、2,911人)患者より高かった。

うつ病の発症率をハザード率として評価したところ、PD患者では診断の8年前からRA、CKD、OP患者と比較して有意に高かった。LBD患者においても発症率は高値を示した。特に差が大きくなったのは診断前の3年間であった。PD患者を基準として、診断の<3~2年前までのうつ病発症率(1,000人年当たり)を見ると、PDでは20.33件(95%信頼区間17.93-23.04)、LBD患者では28.61件(同22.82-35.88、P=0.010)であったのに対し、RA患者では7.16件(同5.98-8.57、P<0.001)、CKDでは12.42件(同11.31-13.64、P<0.001)、OP患者では10.97件(10.00-12.05、P<0.001)であり、さらに診断の<1~0年前になると、PDで40.11件(同36.81-43.70)、LBDで58.98件(50.41-68.99、P<0.001)まで上昇したのに対し、RAで13.49件(同11.92-15.26、P<0.001)、CKD患者で20.72件(同19.32-22.21、P<0.001)、OP患者で18.87件(同17.64-20.18、P<0.001)にとどまり、これは診断前の時期の中で最大の差であった。診断後も、この高リスクの状態は最大5年間持続した。また、診断前3年から診断後3年までの期間におけるLBD患者のうつ病発症率が、診断後1~<2年の時期を除いてPD患者より有意に高かったことは注目に値する*a。性別で層別した解析でも、同様の傾向が確認された。

著者らは、「今回の結果が示すのは、うつ病が、PDやLBDに至る神経変性過程の初期症状である可能性、また高齢期に新たに発症したうつ病がPDやLBDの発症の警告サインとなる可能性、さらにはPDおよびLBDの患者においては、うつ病の早期発見と適切な治療が重要となることである」と述べている。(HealthDay News 2026年1月15日)

 

注釈
*a
診断目<3〜2年
PD:20.33(95%CI 17.93-23.04
LBD:28.61(95% CI 22.82–35.88、P=0.010)

診断前2〜<1年
PD:25.76(95% CI 23.13–28.69)
LBD:37.96(95% CI 31.27–46.09、P=0.001)

診断前1〜<0年
PD:40.11(95% CI 36.81–43.70)
LBD:58.98(95% CI 50.41–68.99、P<0.001)

診断後0〜<1年
PD:42.51(95% CI:38.78–46.60)
LBD:55.42(95% CI 46.38–66.23、P=0.009)

診断後1〜<2年
PD:27.34(95% C 24.11–30.99)
LBD:27.14(95% CI 20.45–36.01、P=0.961)

診断後2〜<3年
PD:18.42(95% CI 15.55–21.82)
LBD:29.43(95% CI 21.67–39.96、P=0.009)

 

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参考文献

  1. Rohde C, et al. General Psychiatry. Published online December 3, 2025. doi: 10.1136/gpsych-2025-102405
  2. Aarsland D, et al. Nat Rev Neurol 2011; 8: 35–47.
  3. Cong S, et al.Neurosci Biobehav Rev 2022; 141: 104749.
  4. Musliner KL, et al. Acta Psychiatr Scand 2019;139:548–57.