日本の高齢者データが示す、室内温度と抑うつ症状の関連性
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
住環境は高齢者の心の健康にどのような影響を与えるのだろうか。今回、室内の寒さや暑さを十分に防げない住宅に暮らす高齢者ほど、抑うつ症状を抱える割合が高いことが示された。温度調節の難しい住宅に住む高齢者では、抑うつ症状のリスクが1.57倍に上ることが明らかになったという。研究は、東北大学医学部の岩田真歩氏、同大学歯学イノベーションリエゾンセンターデータサイエンス部門の竹内研時氏らによるもので、詳細は2025年8月22日に「Scientific Reports」に掲載された1。
日本では室内の温熱環境が深刻な課題となっている。異常な室内温度は心身に悪影響を与え、生活の質(QoL)を低下させることが報告されている2,3。さらに、日本は2007年以降超高齢社会となり、高齢者における抑うつ症状は認知症や虚弱のリスクを高めることが知られている4-6。これらを踏まえると、特に自立高齢者における室内の寒さ・暑さと抑うつの関連を検討することは重要である。そこで本研究では、自立高齢者における室内温度の知覚と抑うつ症状との関連を検証した。
本研究では、2022年の日本老年学的評価研究(JAGES)の横断データより、65歳以上の自立高齢者を対象とした。従属変数は抑うつ症状の有病率とし、独立変数は住宅が室内の寒さや暑さを防げるかどうかについての参加者の自己報告とした。有病率比(PR)と95%信頼区間(CI)は、潜在的交絡因子を共変量として含めたポアソン回帰モデルを用いて推定した。さらに、地域差を検討するため、地域別に解析を行った。
解析対象となった参加者17,491人(男性49.4%)のうち、22.8%が抑うつ症状を示した。参加者の5.1%は寒さや暑さを防げない住居に住んでおり、そのうち41.7%に抑うつ症状が認められた。一方、94.9%は寒さや暑さを防げる住居に住んでおり、その21.8%に抑うつ症状があった。
また、性別・年齢に加え、年収や住居の種類、居住年数などの交絡因子を調整した結果、寒さや暑さを防げない住宅に住む参加者は、防げる住宅に住む参加者と比べて、抑うつ症状のPRが1.57(95%CI 1.45-1.71)となることが分かった。地域別の層別解析では、最北端で最も寒冷な気候の北海道を除く全ての地域で、有意な関連が認められた。
本研究について著者らは、「本研究により、室内の寒さや暑さを感じることが、抑うつ症状の有病率の増加と関連していることが明らかになった。今後は、断熱材の設置などによる室内の温熱環境の改善が抑うつ症状の予防に与える影響を検討する研究が期待される」と述べている。
なお、著者らは、屋内の室温が抑うつ症状に与える影響として、寒冷環境では血圧上昇や脳血流・海馬機能の変化、暑熱環境では脳冷却の困難や血液脳関門の透過性上昇が関与している可能性があると述べている。また、いずれの環境も睡眠の質を低下させ、抑うつ症状の増加に結び付く可能性があると考察している。(HealthDay News 2025年9月29日)
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