
青少年ではスクリーンタイムにより睡眠が削減され、また劣悪な睡眠はスクリーンタイムと抑うつ状態との関連を媒介している
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
青少年において、スクリーンタイムと抑うつ状態との関連は、睡眠時間や睡眠の質などの点から見た睡眠の劣化により媒介されている可能性のあることが、「PLOS Global Public Health」に2025年4月2日掲載された論文で明らかにされた1。
健康な青少年は、成長に伴い自然に睡眠時間が遅くなり、20歳頃までその傾向が続く。また、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器を使用する時間(スクリーンタイム)が長いと睡眠時間が削られ、メンタルヘルスに悪影響が及ぶとされている2-4。
カロリンスカ研究所(スウェーデン)のSebastian Hökbyらは、青少年におけるスクリーンタイムと抑うつ状態との関連に睡眠がどのように関与しているかを明らかにするために、ストックホルム県の55の学校に在籍する4,810人(12〜16歳、男子51%、ベースライン時の平均年齢14.0歳)を対象に、ベースライン時のスクリーニングタイム、その3か月後の睡眠データおよび12か月後の抑うつデータを前向きに収集した。
解析には男女別に構造方程式モデリング(SEM)を用いた。スクリーンタイムは、通常の日(normal day)にテレビ、コンピューターゲーム、インターネットに使う時間と、平日(weekday)、週末(weekend)のそれぞれでインターネットに使う時間を尋ねた上で、その時間に対しスコアを付与し、全て統合することとした。睡眠については、質および時間(Karolinska Sleep Questionnaireにより評価)、クロノタイプ(睡眠の中央時刻により評価)、社会的時差ぼけ(週末と学校に行く日の睡眠中央時刻の差により評価)の4種類を媒介因子とした。抑うつの程度の評価にはベック抑うつ質問票(Beck’s Depression Inventory-Second edition;BDI-II)を用い、さらに今回のSEMでは「10項目の認知・感情的因子と11項目の身体・自律神経因子」および「21項目全ての全体的な抑うつ状態の因子(G因子と呼称)」から成る2+1のバイファクター構造とした。
まず、3カ月後における睡眠指標に対するベースライン時のスクリーンタイムの影響を見たところ、男子の睡眠の質に対してのみ有意でなかったが、それ以外は男女とも、時間、クロノタイプ、社会的時差ぼけに有意な悪影響が及んでおり、その効果量(β値)は0.14から0.30の範囲で、全て有意であった(P<0.05)。
次に、3カ月後における睡眠指標が12カ月後の抑うつ状態(G因子)に与える影響を見た。まず男子では、睡眠の質のみが有意であったが(β=0.085、P<0.001)、ベースライン時のスクリーンタイムが3カ月後における睡眠の質に与える影響が有意ではなかったため、通算すると媒介効果は有意でなかった。これとは別に、ベースライン時のスクリーンタイムが12カ月後の抑うつ状態に及ぼす直接的な影響はβ=0.021(P<0.038)で有意であった。一方、女子では、睡眠の質のβ=0.142(P=0.004)、睡眠時間のβ=−0.042(P=0.024)、クロノタイプのβ=0.037(P=0.040)といずれも有意であったが、社会的時差ぼけのみβ=0.026(P=0.094)と有意でなかった。スクリーンタイムから抑うつ状態への直接効果は、男子とは異なり、有意ではなかった。女子の場合、ベースライン時のスクリーンタイムから12カ月後の抑うつ状態に至る標準化間接効果を見ると、睡眠の質の効果が大きく、他の指標の約2倍に達していた(睡眠の質:β=0.020、P=0.004、睡眠時間:β=0.010、P=0.024、クロノタイプ:β=0.011、P=0.040)。これらを媒介効果の量に換算すると、それぞれ57%、38%、45%に相当した。
著者らは、「本研究結果は、スクリーンタイムにより睡眠が削られる(置換される)ことで、睡眠時間や睡眠の質、睡眠の中央時刻など、種々の点で睡眠に悪影響が及んでいることを示した先行研究の結果を裏付けるものだ。つまり、『displacement hypothesis(置換仮説)』を理論的に再現できたものと言え、この仮説をSEMに当てはめることができることを示している」と述べている。(HealthDay News 2025年4月7日)
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