親のテクノフェレンスと子のメンタルヘルスとの関係
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
デジタル機器に没入するあまり、人との日常の関わりに支障が出ることをテクノフェレンスというが、思春期を迎えつつある子が感じる親のテクノフェレンスと子のメンタルヘルスとの間に負の関係があるとする研究結果が、「JAMA Network Open」に2024年8月16日掲載された1。
モントリオール大学(カナダ)のAudrey-Ann Deneaultらは、妊婦とその子を対象にした前向きコホート研究(All Our Family study)の追跡データを用いて、思春期を迎えつつある9〜11歳の子が感じる親のテクノフェレンス(以下、テクノフェレンス)と、子の不安、注意欠如、多動などのメンタルヘルス症状(以下、メンタルヘルス)との間に因果関係が認められるのかを、双方向で前向きに検討した。対象は、新型コロナウイルス感染症パンデミック中に実施された3回の追跡調査(T1〔9歳時〕:2020年5月20日〜7月15日、T2〔10歳時〕:2021年3月4日〜4月30日、T3〔11歳時〕:2021年11月22日〜2022年1月17日)に1回以上参加した、思春期を迎えつつある子がいる家庭とした。これらの調査に1回以上参加した子は計1,303人、T1時点の平均年齢(標準偏差)は9.7(0.8)歳で、女子が51.5%(529/1,028人)を占めていた。
テクノフェレンスの程度は、子に「親がスマートフォンなどの電子機器を使う時間を減らしてほしいと思う」「一緒にいるときに親が電話をしたり他のデバイスを使ったりするとイライラする」の2つの質問に「全くない」から「ほぼ常にそう感じる」までの4段階のリッカート尺度で回答させて評価した。不安などのメンタルヘルスの症状は、「行動評価尺度(BASC-3)」を用いて評価した。この尺度では、それぞれの質問項目に対して、「全くない」から「ほぼ常にそう感じる」までの4段階で回答させ、結果は標準化tスコアで表した(高スコアほどメンタルヘルスの問題が多い)。ランダム切片交差遅延パネルモデル(RI-CLPM)を用い、家族間においてテクノフェレンスとメンタルヘルスとの関連を、家族内において時間の経過に伴う両者の関連の変化を双方向で、それぞれ検討した。
RI-CLPMで家族間での関連を検討した結果、ランダム切片間の相関が中程度であったことから、テクノフェレンスとメンタルヘルスの問題が増えることとの間には関連性があることが示された(相関係数は、多動0.17、注意欠如0.19、不安0.25)。一方、家族内で、3つの時点それぞれにおいて横断的に相関関係を検討したところ、最もばらつきの少ない数字が得られたのは不安とテクノフェレンスとの関連で、全ての時点で中程度の大きさだった(相関係数は、T1で0.21、T2で0.28、T3で0.25)。
T1の不安→T2のテクノフェレンスの関係の標準化偏回帰係数〔β〕は0.11(95%信頼区間−0.05〜0.26)、T2の不安→T3のテクノフェレンスの関係のβは0.12(同0.001〜0.24)であった。逆方向の関連は認められなかった。このことには、子の不安状態を見かねた親が、デジタル機器を使って対策を模索した可能性も考えられた。T2のテクノフェレンス→T3の注意欠如の関係のβは0.12(同0.001〜0.24)であり、またT1のテクノフェレンス→T2の多動の関係のβは 0.07(同−0.07〜0.22)、T2のテクノフェレンス→T3の多動の関係のβ は 0.11(同−0.02〜0.24)であった。このことから、このような状態に子が置かれると、神経・精神の発達に悪影響が及ぶ可能性も考えられた。
著者らは、「本研究結果は、日常的なケアの一環として、親や思春期に差し掛かった子どもと、デジタル機器の使用とメンタルヘルスとの関係について話し合う必要があることを示している」と述べている。(HealthDay News 2024年8月20日)
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