自殺・危機ライフライン「988」の開設は若者の自殺死亡数の低下と関連

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

米国で2022年7月に開設された3桁の自殺・危機ライフライン「988」は、15〜34歳における予測自殺死亡数の有意な減少と関連していたことが、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に2026年4月24日掲載された研究で明らかにされた1。

米ハーバード大学医学大学院のVishal R. Patelらは、米国死亡証明書の全登録データベースであるNational Vital Statistics Systemの1999年から2024年のデータを用いて、ライフラインの開設後に、15〜34歳の自殺による死亡がどのように変化したのかを四半期ごとに検討した。1999年1月から2022年6月までのデータを用いて、長期トレンドおよび季節性を考慮した季節自己回帰和分移動平均(seasonal autoregressive integrated moving average;SARIMA)モデルを構築し、これを用いて、988のライフラインが開設されなかった場合に予測される自殺死亡数を推定した。

また、薬物乱用・精神衛生管理局の州別の988ライフライン実績報告を用い、2022年7〜9月(開設直後)と2024年10〜12月の月間988応答数の相対変化に基づいて州を順位付けし、増加幅が最も大きかった上位10州と、最も小さかった下位10州に層別化して解析を行った。さらに、2022年7月〜2024年12月における自殺死亡数の観測値と予測値との差を算出した。

その結果、15〜34歳において、2022年7月から2024年12月までの期間の全米での実際の自殺死亡数は3万5,529件であり、988開設前の推移に基づき予測された死亡数(3万9,901件)より11%少なかった。また、988開設後に応答数の増加幅が最も大きかった上位10州では月間通話数が146.2%増加(2022年7〜9月:3万2,635件→2024年10〜12月:8万338件)した一方、増加幅が最も小さかった下位10州では23.6%の増加(同3万9,835件→4万9,226件)にとどまっていた。さらに、15〜34歳における予測値と比較した自殺死亡数の減少幅は、応答数の増加幅が大きい上位10州の方が、応答数の増加幅が小さい下位10州よりも有意に大きかった(−18.2%〔95%信頼区間−21.1〜−15.2%〕対−10.6%〔同−13.2〜−7.9%〕)。

著者らは、「これらの結果は、個々の自殺・危機ライフライン利用者において自殺念慮がただちに減少することを示した先行の質的研究とも一致している。しかし、米国の約半数の州では、このライフラインサービスの現在の資金残高では全てのサービス需要を満たすことはできないと見込まれており、継続的な資金援助が不可欠だ」と述べている。一方で著者らは、本研究は観察研究であり、州ごとの精神保健施策や社会経済的要因などの影響を完全には考慮できていないため、因果関係の解釈には注意が必要だとしている。

なお、1人の著者が、出版業界との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2026年4月27日)

 

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参考文献

  1. Patel VR, et al. Journal of the American Medical Association. Published online April 22, 2026. doi: 10.1001/jama.2026.5157