喘息患者では血清BDNF濃度が抑うつ症状および喘息重症度と正の関連
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
喘息患者において、血清中の脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor;BDNF)濃度は、抑うつ症状および喘息の重症度とそれぞれ正の相関を示すことが、「Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」に2025年11月11日掲載された研究で明らかにされた1。
抑うつ症状は喘息患者においてしばしば認められ、かつ喘息症状の制御を困難にさせることが知られている2-6。脳や血液中のBDNF濃度は、大うつ病性障害(MDD)では低下しており7,8、MDD発症時に血清BDNF濃度が低下することも報告されている9。一方、重症喘息患者ではBDNFの気道での発現が亢進していることや、喘息患者で血清BDNF濃度が上昇していることも報告されている10,11。これらのことから、BDNFはMDDと喘息の両方の病態生理に関わっている可能性が考えられる。
広島大学大学院医系科学研究科分子内科学の川本数馬氏らは、喘息患者140人(年齢中央値64.5歳、男性72人)を対象に、血清BDNF濃度(以下、BDNF濃度)と抑うつ症状と関連、およびこれらに関係する因子を検討した。抑うつおよび不安の症状は、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)の抑うつ(HADS-D)および不安(HADS-A)のサブスケールで評価し、いずれも8点以上を「症状あり」とした。喘息については、治療強度を日本のガイドラインに基づきステップ1〜4に分類し、また、喘息コントロールをAsthma Control Questionnaire(ACQ-6)、喘息関連QOLをmini–Asthma Quality of Life Questionnaire、呼吸困難の症状を改良版MRC(modified Medical Research Council dyspnea scale;mMRC)で評価した。さらに、対象者に三軸加速度センサーを2週間装着させて身体活動量を計測し、中強度〜高強度の身体活動(MVPA;3METs以上)の合計時間を算出した。抑うつ症状ありの群となしの群との間でのBDNF濃度の比較はWilcoxon順位和検定によった。Spearman順位相関により、各因子とBDNF濃度、HADS-Dスコア、HADS-Aスコアとの関係を評価した。また、年齢、性別、喫煙(箱×年)、肥満(BMI≧30)、治療ステップ、ACQ-6スコア、MVPAを独立変数とする多変量線形回帰モデルにより、BDNF濃度、HADS-Dスコア、HADS-Aスコアと関係する因子を探った。
その結果、抑うつ症状ありの群では、なしの群よりBDNF濃度が有意に高かった(P=0.023、Wilcoxon順位和検定)。BDNF濃度とHADS-Dスコアの間には有意な正の相関が認められ(Spearman順位相関係数〔rs〕=0.293、P<0.001)、BDNF濃度と治療ステップの間でも正の相関が認められた(rs=0.265、P=0.002)。一方、HADS-AスコアとBDNF濃度との間に関連は認められなかった。多変量線形回帰分析では、BDNF濃度が高いほど、HADS-Dスコアが高く(標準化偏回帰係数〔β〕0.785、95%信頼区間0.240–1.329、P=0.005)、治療ステップも高く(同2.859、0.701–5.017、P=0.010)、血小板数も多かった(同0.044、0.006–0.081、P=0.022)。
共著者の1人である広島大学大学院医系科学研究科准教授の岩本博志氏は「MDDとは異なり、喘息患者が抑うつ症状を有する場合、血清BDNF濃度は低値ではなく、むしろ高値を示す。これらの結果は、喘息における抑うつ症状の生物学的メカニズムがMDDとは異なる可能性を示唆している」とニュースリリースの中で述べている12。
なお、複数の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2026年1月23日)
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