弁証法的行動療法は10代の双極スペクトラム障害患者の自殺企図の減少と関連

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

弁証法的行動療法(dialectical behavior therapy;DBT)には、10代の双極スペクトラム障害患者の自殺企図を減少させる効果があるとする研究結果が、「JAMA Psychiatry」に2023年9月13日掲載された1

米ピッツバーグ大学のTina R. Goldsteinらは、2014年11月から2019年9月の間に、ピッツバーグ大学医療センターの専門外来精神医療クリニックで双極スペクトラム障害の診断を受けた12~18歳の患者100人(平均年齢16.1歳、女性85%、双極I型障害14人、双極Ⅱ型障害28人、特定不能の双極性障害58人)を対象とし、DBTと標準治療(standard of care;SOC)の心理療法の有効性を比較した。

対象患者は、1年にわたってDBTを受ける群(DBT群、47人)、またはSOCの心理療法を受ける群(SOC群、53人)にランダムに割り付けられた。DBTは1年間に計36セッション(個別DBTセッションと家族単位で行われる家族スキルトレーニングセッションがそれぞれ18回ずつ)が行われた。一方、SOCの心理療法は、双極性障害に対する治療経験のあるセラピストが行う心理教育や認知行動療法、家族中心アプローチ、対人関係療法、家族療法、支持療法などであった。主要評価項目は、1年間の自殺企図の頻度および気分症状(抑うつ、軽躁/躁)とその変化とした。副次評価項目は、DBTの効果に対し、自殺企図歴および感情制御困難が与える影響の評価とした。自殺企図は、Adolescent Longitudinal Follow-Up Evaluation(ALIFE)およびColumbia-Suicide Severity Rating Scale Pediatric Version(C-SSRS、コロンビア自殺評価スケール小児版)により3カ月ごとに評価した。

平均47〔標準偏差(SD)14〕週間の追跡期間中において、DBT群でもSOC群でも、気分症状(抑うつ、軽躁/躁)についての改善は、どちらも同程度かつ有意であった*。また、DBT群とSOC群のベースラインの自殺企図の頻度は、ALIFEによる評価では同等〔平均(SD)2.0(4.5)vs同1.8(3.9)、P=0.80〕、C-SSRSによる評価ではDBT群の方がやや高かった〔同1.4(3.6)vs同0.6(0.9)、P=0.02〕。ところが、追跡期間中の自殺企図の頻度は、ベースラインの自殺企図で調整すると、ALIFEによる評価でもC-SSRSによる評価でも、DBT群の方がSOC群よりも有意に低く〔ALIFE:同0.2(0.4)vs同1.1(4.3)、P=0.03、C-SSRS:同0.04(0.2)vs同0.10(0.3)、P=0.03〕、DBTは1年の間に自殺企図リスクを有意に低減することが示された〔ALIFE:発生率比(IRR)0.32(95%信頼区間[CI ]0.11〜0.96)、P=0.03、C-SSRS:同0.13(0.02〜0.78)、P=0.03、ポアソン回帰モデル〕。DBT群での自殺企図の低下は、自殺企図歴の有無と時間による影響を受けており(IRR 0.23、95%CI 0.13〜0.44、P<0.001、混合ポワソン回帰)、また、感情制御困難の改善(同0.61、0.42〜0.89)により媒介されていて、これは特にベースラインの感情制御困難の程度が高い群で顕著であった(標準化されたβ値−0.59、95%CI −0.92〜−0.26)。

著者らは、「これらの知見は、10代の双極スペクトラム障害患者での自殺行動に対する効果が確かめられている心理社会的介入がDBTであり、最初に行うべき介入であることを支持するものだ」と述べている。(HealthDay News 2023年9月19日)

 

注釈
*
標準化されたうつ病評価尺度:傾き-0.17、95%CI-0.31~-0.03、標準化された躁病評価尺度:同-0.24、-0.34~-0.14。

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参考文献

  1. Goldstein TR, et al. JAMA Psychiatry. Published online September 13, 2023. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2023.3399