身体的暴行を受けた児はその後に精神疾患を発症するリスクが高い
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
幼少期に身体的暴行を受けた児は、暴行を受けていない児と比べて、その後に精神疾患を発症するリスクが2倍近くに上るとする研究結果が、「JAMA Network Open」に8月16日発表された1。身体的暴行を受けた児の精神疾患リスクは、暴行を受けてから1年目が最も高く、3倍強に上っていた。
トロント大学(カナダ)のÉtienne Archambaultらは、2006年から2014年の間に、入院または救急外来受診を要する身体的暴行を受けたオンタリオ州の0~13歳の児(5,487人、男児54.8%)と、年齢をマッチさせた暴行を受けた経験のない児(21,948人、同45.1%)の集団を対象にコホート研究を実施し、暴行を受けてから5年間の精神疾患の発症リスクを調べた。対象となった児全体の平均年齢は7.0(標準偏差4.6)歳だった。分析にはCox比例ハザード回帰モデルを用い、性別、居住地域、貧困状況を示す物質的剥奪指標(五分位)などを調整した。
その結果、物質的剥奪指標の最も高い五分位に属した割合は、身体的暴行を受けていない児では23.8%(5,213人)だったのに対し、暴行を受けた児では33.2%(1,822人)であり、標準化差は0.21だった。地方に居住している割合は、暴行を受けていない児では6.0%(1,307人)だったのに対し、受けた児では22.2%(1,217人)であり、標準化差は0.48だった。また、目下、母親が精神疾患を患っている割合は、暴行を受けていない児では19.1%(4,195人)だったのに対し、受けた児では34.5%(1,894人)であり、標準化差は0.35だった。
身体的暴行を受けた児と受けていない児は、それぞれ38.6%(2,119人)と23.4%(5,130人)が精神疾患と診断された〔調整ハザード比(aHR)1.96、95%信頼区間(CI)1.85~2.08〕。精神疾患の発症リスクは、暴行を受けてから1年目が最も高かった(同3.08、2.68~3.54)。身体的暴行の経験の有無に関わらず、発症する精神疾患のタイプは非精神病性障害(気分障害や不安障害など)が最も多く、その割合は、身体的暴行を受けた児で16.2%(890人)、受けていない児で10.6%(2,320人)だった。また、精神科救急を受診して精神疾患と診断されていた割合は、身体的暴行を受けた児では14.0%(769人)、受けていない児では2.8%(609人)だった。
著者らは、「非精神病性障害など、身体的暴行を受けた児で多く診断されるタイプの精神疾患に対する早期介入プログラムを立案すべきであり、特に暴行を受けてから1年以内の支援が重要だ」と述べている。(HealthDay News 2023年8月18日)。
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