うつ病既往患者では高い認知機能がうつ病再発リスク上昇と関連

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

寛解期にあるうつ病患者では、うつ病再発リスクが高く、また認知機能が高いほどそのリスクが高いとする研究結果が、「BMJ Mental Health」に2026年5月6日掲載された1。

うつ病では、気分症状が改善した後も認知機能障害が残存することが少なくない2-4。しかし、認知機能が、健常者のうつ病発症や、うつ病既往患者の再発とどのように関連するかは解明されていない。英バーミンガム大学のAngharad N. de Catesらは、UKバイオバンクのデータを用いて、ICD-10で定義された寛解期うつ病患者(depression in remission;RD)1,862例(平均年齢52.7歳)と、性別・年齢でマッチさせたうつ病既往のない対照者1,862例を対象に、認知機能と将来のうつ病リスクとの関連を検討した。認知機能は、情報処理速度、推論能力、注意・実行機能、記憶の4領域について評価した。これら領域の成績をzスコア化し、それらを統合して「総合認知機能」とした。ベースライン時の認知機能と将来のうつ病発症・再発との関連は二項ロジスティック回帰分析により検討し、年齢、性別、教育歴、喫煙、飲酒、BMIなどの交絡因子で調整した。また、多変量Cox比例ハザードモデルにより調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出し、RD群と対照群におけるうつ病発症までの期間について検討した。

追跡期間中のうつ病発症率は、RD群で33%(623人)、対照群で13%(240人)であり、縦断的評価における時期の違いを考慮したCox比例ハザードモデルでは、RD群でのうつ病発症(再発)リスクは対照群の3倍に上った(調整HR 3.16、95%CI 2.71-3.67、全体として比例ハザードが成り立つという仮定の元でのP=0.07、n=3,724)。次にベースライン時の総合認知機能スコア(zスコア)と追跡期間中のうつ病発症リスクとの関連を検討したところ、対照群では、うつ病リスクの推定周辺平均(EMM)は、総合認知機能スコアが-1SD(標準偏差)の場合で0.25%、平均で0.20%、+1SDで0.15%となり、総合認知機能スコアが低いほどうつ病発症リスクが高かった。ところが、RD群ではこの関係が反対となり、うつ病リスクのEMMは、総合認知機能スコアが+1SDで1.1%、平均で0.9%、-1SDで0.74%で、総合認知機能スコアが高いほどうつ病発症(再発)リスクが上昇していた。この関連には、両群とも、実行機能、処理速度、推論能力が関与していた。

さらにMRIデータを用いた横断的解析では、両側の扁桃体・海馬・中前頭回、左楔前部および左後帯状皮質の灰白質体積が大きいほど認知機能が良好であることが、対象者全てにおいて示されたものの、これらの脳構造指標はいずれも将来のうつ病発症リスクとは有意な関連を示さなかった。

de Catesは、「RDでは、知機能スコアが高いほど、うつ病再発リスクが高かった。これは対照群で認められた傾向とは逆であった。RDが寛解状態を維持できるよう支援するため、RDが有する認知機能の特性に基づいて、RDに的を絞った介入方法を見出すべく、今後も継続的な検討が必要である」と述べている。また、寛解うつ病患者で認知機能が高いほど再発リスクが高かった理由については、症状への気付きや報告のしやすさなど複数の可能性が考えられるものの、明らかではなく、今後さらなる検証が必要としている。

なお、数名の著者が、バイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2026年5月20日)

 

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参考文献

  1. de Cates AN, et al. BMJ Mental Health. Published online May 6, 2026.
  2. Kriesche D, et al. Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci 2023; 273:1105–28.
  3. Semkovska M, et al. Lancet Psychiatry 2019; 6:851–61.
  4. McClintock SM, et al. J Clin Psychopharmacol 2011; 31:180–6.