うつ病や不安症に伴うアンヘドニアに対するポジティブ感情治療の有効性が示唆される

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

重度のアンヘドニア(ポジティブな感情の低下)を伴う中等度から重度のうつ病または不安症の症状改善においては、報酬への反応と脅威に対する反応の調整が重要であり、特にポジティブ感情に焦点を当てる治療は臨床的に有効な可能性があるとする研究結果が、「JAMA Network Open」に2026年4月24日掲載された1。

アンヘドニアは、喜びや興味を感じにくくなる状態で、うつ病の中核症状の一つとされる2-6。近年では、他の精神疾患にも共通して見られる診断横断的な特徴として注目されているが、従来からある、ネガティブ感情への対応を主とする薬物療法や心理療法(Negative Affect Treatment;NAT)は、アンヘドニアの寛解には限定的な効果しか示していない7-11。

米南メソジスト大学のAlicia E. Meuretらは、過去の研究で報酬処理の3つの段階(報酬期待、報酬獲得、報酬学習)の直接的な改善を目的とした新たな心理社会的介入であるポジティブ感情治療(Positive Affect Treatment;PAT)を開発。著者らが以前行った2件のランダム化比較試験では、PATはNATに比べ、ポジティブ感情の低下やアンヘドニア、うつ・不安症状を改善することが示されていた。

今回の研究では、PATの有効性を再検証するとともに、報酬系や脅威反応の変化が症状改善にどう関与するかを検討した。対象は、ポジティブ感情が著しく低く、日常生活に支障を来たす中等度~重度のうつ病または不安症の患者98人(平均年齢32.8歳、女性66.3%)とし、15回、毎週、PAT(51人)またはNAT(47人)を個別に受ける群にランダムに割り付けた。評価項目は、自記式尺度(Positive and Negative Affect Schedule–Positive subscale)で評価するポジティブ感情、面接者が評価するアンヘドニア、自記式尺度(Depression, Anxiety, and Stress Scale;DASS-21)で評価したうつ・不安症状とした。また、潜在的な媒介因子として、報酬期待・動機づけ、報酬獲得への反応、報酬学習、および脅威反応について、自己評価、行動による評価、および生理学的評価を行い(合計14項目)、治療効果との関連を調べた。解析にはITT解析の混合効果マルチレベルモデル(MLM)を用い、複数の測定項目を解析する際には多変量MLM(MMLM)を用いた。媒介分析では、時間経過による媒介因子の変化(aパス)と、各指標の測定値と次のセッション時の臨床状態との時間差関連(bパス)を評価した。

MMLMによる解析の結果、PAT群はNAT群と比べて全体的な臨床状態(ポジティブ感情、アンヘドニア、うつ・不安症状)の改善が有意に大きく(回帰係数〔b〕=−0.06、95%信頼区間〔CI〕−0.11~−0.01、P=0.02、効果量〔d〕=0.27)、1カ月後のフォローアップ時点でも良好な状態を維持していた(b=−0.21、95%CI −0.41~−0.02、P=0.04、d=0.21)。MLMによる解析では、PAT群のDASS-21のスコアがNAT群より有意に改善していた(b=1.27、同0.61~1.93、P<0.001、d=0.55)。また、両群ともに、報酬期待・動機づけおよび報酬獲得への反応は有意に改善したがa)、両群間に有意差は認められなかった。一方、報酬学習については、両群とも有意な変化は認められず、有意差もなかった。さらに、脅威反応については、両群ともに有意に低下した(b=−0.09、95%CI −0.10~−0.07、P<0.001、d=0.40)。その低下はPAT群よりNAT群で大きかったが(群×時間の交互作用:b=−0.04、95%CI −0.08~0.00、P=0.03、d=0.18)、1カ月後の時点では両群間の有意差は消失した。14個の潜在的な媒介因子のうち、4個の報酬関連因子と、2個の脅威関連因子b)が、臨床状態の全体的な改善と関連していた。ただし、一部(BAS-RD)の媒介効果は、NAT群ではわずかであり、PAT群では有意ではなかった。

著者らは、「全体として見ると、PATは、従来の治療法に比べ、うつ病または不安症の症状をより大きく改善することが分かった。今回の結果は、ポジティブな感情を高めることが、うつ病・不安症患者に対する心理療法において鍵になることを示すものだ」と結論付けている。(HealthDay News 2026年4月27日)

 

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参考文献

  1. Meuret AE, et al. JAMA Network Open. Published online April 24, 2026
  2. American Psychiatric Association, eds. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders: Fifth Edition, Text Revision. American Psychiatric Association; 2022.
  3. World Health Organization. International Statistical Classification of Diseases 11th Revision. World Health Organization; 2019.
  4. Kendall AD, et al. J Abnorm Psychol. 2015;124(4):933-943.
  5. Khazanov GK, Ruscio AM. Psychol Bull. 2016;142(9):991-1015.
  6. Spijker J, et al. Acta Psychiatr Scand. 2001;103(2):122-130.
  7. Khazanov GK, et al. Behav Res Ther. 2020;125:103507.
  8. Alsayednasser B, et al. Behav Res Ther. 2022;159:104185.
  9. Hoffman SN, et al. J Affect Disord. 2024;349:358-369.
  10. Dunn BD, et al. Clin Psychol Sci. 2020;8(1):36-51.
  11. Cao B, et al. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2019;92:109-117.