いくつかの特定の身体疾患が併存していると、その後のうつ病リスクが上昇

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

複数の身体疾患が併存している場合、その組合せによってはその後のうつ病リスクが上昇し得ることを示した研究結果が、「Communications Medicine」に2025年5月13日掲載された1

英エディンバラ大学のLauren Nicole DeLongらは、UKバイオバンクのデータを用いて、69種類の身体的疾患(ほぼ全て慢性疾患)につき、「心血管疾患+慢性腎臓病+痛風」などの併存疾患の組合せを疾患クラスターとして、その後のうつ病発症リスクとの関連を検討した。対象はUKバイオバンク参加者のうち、最初に評価を受けたベースライン時(2006〜2010年)の1年以上前から1日以上後までの一般診療データが欠けることなく利用可能で、かつベースライン時までにうつ病を有していなかった37〜73歳の人とした。

まず、複数のクラスタリング手法を検討した結果、k-modesが最適と判断され、これによって、全体、男性、女性の各コホートで各8つのクラスターを作成した。女性では痛風がないなど、性別によりクラスターは異なっていた。各コホートにおいてそれぞれのクラスターに占める人数の割合を見ると、全体コホートでは「がんに種々の疾患を合併」が27.9%、「健康だが鼻炎あり」が22.2%、「心血管疾患(CVD)+糖尿病」が15.5%、「極めて多くの疾患を併存(very extensive morbidity)」が12.5%、女性コホートでは「がんに種々の疾患を合併」が29.3%、「CVD+糖尿病」が19.7%、「筋骨格系の疾患」が16.4%、「健康だが鼻炎あり」が15.9%、男性コホートでは「CVD+糖尿病」が24.2%、「がんに種々の疾患を合併」が20.8%、「筋骨格系の疾患+その他」が19.1%、「健康だが鼻炎あり」が17.2%であった。

次に、ベースライン時にうつ病の既往のなかった女性73,036人と男性67,920人につき、これに含まれているベースライン時に身体疾患のなかった女性16,238人と男性14,313人を対照とし、Cox回帰モデルを用いて、死亡を競合リスクとしてクラスターごとにその後のうつ病発症との関連を検討した。

平均6.8年の追跡期間中に、5,904人(4.2%)がうつ病を発症した。うつ病のリスクが高いのは「極めて多くの疾患を併存」(平均併存疾患数は全体で4.50、女性で5.69、男性4.30)で、ハザード比(HR)は全体コホートで2.42(95%信頼区間〔CI〕2.17–2.69)、女性コホートで2.67(同2.24–3.17)、男性コホートで2.65(同2.22–3.18)であった。一方、リスクが最も低かったのは、「健康だが鼻炎あり」で、HRは全体コホートで1.59(同1.46–1.75)、女性コホートで1.48(同1.30-1.67)、男性コホートで1.50(1.29-1.75)であった。うつ病リスクは併存疾患の数が多いほど高くなる傾向が見られたが、例外もあり、例えば「加齢黄斑変性+糖尿病」は全体コホートでは平均疾患数が3.09個と4番目に多いにもかかわらず、うつ病リスクとの関連は弱めだった(HR 1.29、95%CI 0.85–1.98)。

論文の共著者であるエディンバラ大学のBruce Guthrieは、「医療では身体的健康と精神的健康を全く別のものとして扱うことが多い。しかし、今回の結果は、身体疾患を有する人に対しては、将来うつ病が発症する可能性に注意深くなるべきこと、またうつ病の管理もより適切に行う必要があることを示すものだ」と同大学のプレスリリースで述べている2。(HealthDay News 2025年5月21日)

 

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参考文献

  1. DeLong LN, et al. Communications Medicine. Publisher online May 13, 2025. doi: 10.1038/s43856-025-00825-7
  2. The University of Edinburgh Press Release. 13 May 2025. https://www.ed.ac.uk/news/multiple-chronic-illnesses-could-double-risk-of-depression (2025年6月20日閲覧)