英インペリアル・カレッジ・ロンドン（ICL）のAdam Hampshireは、COVID-19罹患者に客観的な尺度で測定できる認知機能障害が認められるのか、またその障害の程度は症状の持続期間と関係があるのかなどを探るために、2022年8月1日から12月30日の間に英国の成人80万人にオンラインでの認知機能評価への参加を呼びかけた。認知機能は、COVID-19罹患後症状との関連が示唆されている即時記憶や空間作動記憶など8つのドメインの課題で構成された尺度を用いて行われた。

対象は、全ての評価尺度に回答した112,964人とし、これらを、COVID-19非罹患者、無症候性COVID-19罹患者、罹患後4週間未満で症状が消失した患者、4週間以上〜12週間未満で症状が消失した患者、12週間以上で症状が消失した患者、12週間を過ぎても症状が消失しない患者、の6群に分類した。包括的認知機能スコアは、認知機能テストの総スコアを用いた因子分析により推定した。

まず、COVID-19罹患歴が1回の者について、感染期間（2020年1月1日から100日単位で区切って1,000〜1,099日まで）ごとの包括的認知機能スコアがどうなるか、線形回帰分析により罹病期間と入院（重症度を反映する因子）や新型コロナワクチン接種回数（重症度を媒介する因子）で調整して検討したところ、100〜199日、つまりオリジナル株が猛威をふるったパンデミック初期に罹患した者では、包括的認知機能スコアが有意かつ最低だった^*a。

重回帰分析をステップワイズ法で行ったところ、包括的認知機能スコアの変動を説明するための共変量として、罹患時に優勢だった変異株（オリジナル株、アルファ株、デルタ株、オミクロン株）、罹病期間、入院の有無が残り、交互作用は認められず、また包括的認知機能が大きく障害を受けていたのは、オリジナル株またはアルファ株優勢期の罹患者(それ以外の変異株優勢期の罹患者と比較)、12週間を過ぎても症状が消失しない患者（非罹患者と比較）、入院患者（非入院患者と比較）という結果であった^*b。また、症状の持続期間が4週間未満だった者も12週間以上だった者も、その包括的認知機能は、COVID-19非罹患者に比べ、いずれもわずかな程度障害されていることが示された〔4週間未満：－0.23 SD、95％信頼区間（CI）−0.33〜−0.13、12週間以上：－0.24SD、同−0.36〜−0.12〕。

罹患者を罹病期間や優勢変異株の時期の観点で分類し、傾向スコアにより、罹患者と非罹患者とを人口統計学的属性や既存の疾患数などについてマッチさせて比較したところ、同様の結果が得られた。認知機能テストの8つのドメインごとに12週間以上でも症状が消失しない者とCOVID-19非罹患者の成績を比較すると、前者では記憶、推論、実行機能課題が特に大きな影響を受けていたことが示された（−0.33～−0.20 SD）。

著者らは、「われわれはこの研究で、COVID-19罹患後、1年以上たっても続き得るような、客観的に測定可能な認知障害を見出した。これほど長期にわたって持続するような認知障害とはいったい何なのか、また、これが臨床的にどのような意味を持つのかについては未知数であり、引き続き監視や研究を続けていく必要がある」と述べている。（HealthDay News 2024年2月29日）

注釈
*a
期間：100－199日の包括的認知機能平均スコア：-0.235 SD、標準誤差（SEM）：0.046、one way ANOVA across time categories。

*b
例：
アルファ株優勢期の感染者対オミクロン株優勢期の感染者：−0.17SD、95％CI −0.20〜−0.13。
12週間を過ぎても症状が消失しない患者対非罹患者：−0.42SD、95％CI −0.53〜−0.31。
ICU入室患者対非入院患者：−0.35SD、95％CI −0.49〜−0.20。

Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.

Photo Credit: Adobe Stock