セロトニン2A受容体結合能と内向的神経症傾向が強い人のうつ病リスクは高い
現在は健康でも、セロトニン2A受容体(5-HT2AR)の結合能が高く、内向的神経症傾向が強い人は、将来、うつ病を発症するリスクが高いとする研究結果が、コペンハーゲン大学病院(デンマーク)付属のRigshospitaletのAnjali Sankarらにより、「Nature Mental Health」2024年10月号に掲載された1。
5-HT2ARシステムは、気分や認知などのうつ病の影響を受ける機能の調節に重要であることが知られている2。また、5-HT2ARは、特定の性格特性とも関連することが示されており3-5、特に、うつ病発症の強力なリスク因子とされている神経症との関連6は注目に値する。
本研究では、5-HT2ARのPETスキャンによる脳分子イメージングデータと神経症傾向の評価データを用いて、5-HT2ARと内向的神経症傾向が、将来うつ病を発症するリスクといかなる関連を有するかを評価した。対象は、18〜81歳の健康な人131人(年齢中央値34.20歳、四分位範囲〔IQR〕25.64歳、女性36.64%)で、NEO-PI-R人格検査で評価した内向的神経症傾向スコアの中央値は45点(IQR 16点)、大脳新皮質における5-HT2AR結合能は1.45(IQR 0.57)であった。
追跡期間中央値15年の間に15人(女性10人)がうつ病の診断か、抗うつ薬の処方を受けていた。原因別Cox回帰分析の結果、大脳新皮質内の5-HT2AR結合と内向的神経症傾向との間に有意な正の交互作用が見られ(P=0.018)、うつ病リスクが最も高かったのは、高い5-HT2AR結合能と内向的神経症傾向スコアが高い人であった。さらに、女性のうつ病リスクは男性よりも有意に高かった(ハザード比3.48、95%信頼区間1.12–10.80、P=0.03)。その他の変数との間に有意な関連は認められなかった(P>0.13)。競合リスク(死亡)の検討では、5-HT2ARの結合能と内向的神経症傾向との交互作用は、死亡リスクとの関連はなかった(P=0.77)。MRI画像や近親者のうつ病歴をモデルに含めて検討しても、これらの交互作用とうつ病リスクとの関連は有意なままであった(順に、P=0.018、P=0.015)。
著者らは、「エビデンスに基づく認知行動療法やマインドフルネスのトレーニングなどの介入を行って、神経症傾向に関連する行動を減らせば、神経症傾向と5-HT2AR結合能が高い人において、将来、うつ病が発症するリスクを減らせるのではないか」と述べている。(編集協力HealthDay)
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