3年間の軽度のカロリー制限を伴うMIND食、認知機能に有意な改善は認められず

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

認知症の家族歴を有する、認知機能に異常の見られない者に3年間、軽度のカロリー制限を伴うMIND食(Mediterranean- Dietary Approaches to Stop Hypertension [DASH] Intervention for Neurodegenerative Delay)を摂取させた場合と、軽度のカロリー制限を伴う対照食を摂取させた場合とでは、認知機能や脳MRI所見に違いは見られなかったとするランダム化比較試験の結果が、アルツハイマー病協会国際会議(AAIC 2023、2023年7月16〜20日、オランダ・アムステルダム)で発表され、論文が「The New England Journal of Medicine(NEJM)」2023年8月17日号に掲載された1。MIND食は、心疾患や高血圧予防を目的とした食事法である地中海食とDASH食の2つを組み合わせた食事法である。

米ラッシュ・アルツハイマー病センターのLisa L. Barnesらは、認知機能は低下していないが認知症の家族歴があり、BMIが25kg/m2以上、14項目の質問票のスコアが8点以下の食事内容が「最適ではない」65歳以上の者を対象に、軽度のカロリー制限を伴うMIND食が認知機能に与える影響を、軽度のカロリー制限を伴う対照食と比較して評価するために、2施設でのランダム化比較試験を行った。対象となった604人のうち、301人(平均年齢70.4±4.2歳、男性34.9%)はMIND食を摂取する群に、303人(平均年齢70.4±4.2歳、男性35.0%)は対照食を摂取する群に、それぞれ無作為に割り付けられた。両群とも3年にわたり、割り当てられた食事法の遵守に関するカウンセリングと減量を促進するためのサポートを受けた。

認知機能は、12種類の検査のテストバッテリーにより、ベースライン時と、その6、12、24、36カ月後に評価した。主要評価項目は、全般的な認知機能スコアおよび認知機能の4つのドメイン(エピソード記憶、意味記憶、実行機能、知覚速度)スコアのベースラインからの変化量、副次評価項目は、MRIで測定した脳白質高信号域、海馬体積、全脳体積(灰白質と白質)のベースラインからの変化量とした。認知機能のスコアは、各テストのスコアを、ベースライン時の平均スコアと標準偏差を用いてzスコアに変換し、全検査での平均スコアを出して全般的認知機能スコアと各認知機能ドメインのスコアを算出。線形混合効果モデルを用いて、対照食との比較でMIND食の認知機能に与える影響を検討した。MRI(ベースライン時と36カ月後の2回測定)で測定した脳体積のデータは、頭蓋内容積で標準化した。次いで、推定周辺平均を用いて平均値と95%信頼区間(CI)を算出し、ベースラインから3年間の変化量を計算した。その上で、ペアワイズ比較によりMIND食群と対照食群の間での違いの評価を行った。

MIND食群では26人(8.6%)、対照食群では14人(4.6%)がベースラインから3年目の認知機能の追跡調査を受けなかった。3年間での全般的認知機能スコアの推定平均変化量は、MIND食群で0.205標準化単位(SU)(95%CI 0.164〜0.246)、対照食群で0.170SU(同0.130〜0.210)であり、ITT解析において両群間に有意な差は認められなかった(推定平均差0.035、95%CI −0.022〜0.092、P=0.23)。認知機能の4つのドメインのスコアの3年間の変化量についても、全般的認知機能と同様に有意な差は認められなかった*a。さらに、MRI測定に同意して結果が解析に回された200人(MIND食101人、対照食99人)において脳白質高信号域、海馬体積、全脳体積のベースラインからの変化量を測定した結果、両群間で有意な差は認められなかった。〔脳白質高信号域:平均差−0.019(95%CI −0.046〜0.0080)、海馬体積:同0.005(−0.016〜0.026)、全脳体積:同0.001(−0.003〜0.005)〕。なお、両群とも、脳白質高信号域は増加したが、海馬体積と全脳体積は減少していた。

著者らは、「MIND食を摂取した者における全般的な認知機能スコアは、軽度のカロリー制限を行った対照食を摂取した者よりも改善はしたものの、その差はわずかなものに過ぎなかった」と述べている。

なお、2人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年7月19日)

 

注釈
*a
MIND食群と対照食群の間の推定平均差
エピソード記憶:0.045 (−0.046〜0.137)
実行機能:0.070 (−0.033〜0.173)
知覚速度:0.008 (−0.078〜0.094)
意味記憶:−0.043 (−0.144〜0.057)

Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.

Photo Credit: Adobe Stock

※本コーナーの情報は、AJ Advisers LLCヘルスデージャパン提供の情報を元に掲載しており、著作権法により保護されております。個人的な利用以外の目的に使用すること等は禁止されていますのでご注意ください。

参考文献

  1. Barnes LL, et al. The New England Journal of Medicine 2023 August 17;389(7):602-611.