
ボランティア活動への参加はうつ病リスクの低下と関連
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
米国の地域社会に暮らす高齢者のうつ病とその関連要因について調査したところ、有病率は、全体としては6.2%であるものの、社会人口統計学的特徴や併存疾患の有無などにより大きく異なることが「Journal of the American Geriatrics Society」に2025年1月8日掲載された論文で明らかにされ、特にボランティア活動に参加することがうつ病リスクの低下に寄与する可能性が示された1。
高齢化の進む米国では、うつ病などのメンタルヘルスの問題が、健康的に年を重ねることに対する阻害要因の一つとなっている。しかし、地域在住の高齢者がうつ病をどの程度の割合で有しているかについて調査した研究はあまりない。
米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のYitao Xiらは、高齢ドライバーに関する縦断研究(Longitudinal Research on Aging Drivers;LongROAD)のデータを用いて、地域在住の高齢者2,990人(65〜79歳)を対象に、うつ病の有病率とその関連要因を調査した。主要評価項目は調査開始時のうつ病有病率で、うつ病の有無は、患者報告アウトカム測定情報システム(Patient Reported Outcomes Measurement Information System;PROMIS)から算出したうつ病Tスコアによった(55点以上が臨床的うつ病)。また、多変量ロジスティック回帰分析により、年齢(65〜69歳、70〜74歳、75歳以上)、性別(男性、女性)、人種・民族(非ヒスパニック系白人、非ヒスパニック系黒人、ヒスパニック系、その他)、婚姻状況(既婚、未婚)、教育レベル(高校卒業以下、大学一部履修・大学卒業、修士号・専門職学位・博士号取得)、世帯年収(50,000ドル未満、50,000〜79,999ドル、80,000ドル以上)、うつ病の既往、糖尿病、不安障害、アルコール使用障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ボランティア活動への参加の有無、居住地(都市部、郊外、郡部)などを共変量としてモデルに投入し、うつ病の調整オッズ比(aOR)と95%信頼区間(CI)を算出した。
調査開始時点で、186人(6.2%)が臨床的うつ病に相当する症状を有することを申告していた。うつ病有病率は、社会人口統計学的特徴や併存疾患により大きく異なり、65〜69歳(7.9%;70〜74歳4.9%、75歳以上5.1%、p=0.0062)、女性(7.2%;男性5.2%、p=0.0135)、未婚(8.1%;既婚5.1%、p=0.0003)、高校卒業以下(8.3%;大学一部履修・大学卒業7.0%、修士号・専門職学位・博士号取得4.8%、p=0.0052)、世帯年収が50,000ドル未満(10.7%;50,000〜79,999ドル5.7%、80,000ドル以上3.9%、p<0.0001)の人で高かった。うつ病の有病率はまた、うつ病の既往ありの人(17.1%;なし3.6%、p<0.0001)や併存疾患がある人でも高かった(糖尿病9.0%;なし5.6%[p=0.0007]、不安障害15.3%;なし5.1%[p=0.0001]、アルコール使用障害12.0%;なし6.02%[p=0.0061]、PTSD25.8%;なし5.66%[p<0.0001])。一方、ボランティア活動に参加している人では参加していない人に比べてうつ病の有病率が有意に低かった(4.1%;なし8.0%、p<0.0001)。多変量ロジスティック解析から算出された、ボランティア活動に参加している人でのうつ病のaORは0.57(95%CI 0.40-0.81)であった。
本論文の上席著者であるコロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のGuohua Liは、「高齢者においてうつ病が広がりを見せていることには、社会人口統計学的および医学的要因が大きく影響していることが、この研究によって再認識された。これらの結果は、高齢者の経済的安定をしっかりしたものにする政策が必要であることを訴えるとともに、ボランティア活動がうつ病リスクの軽減手段として有効である可能性を示す、さらなるエビデンスとなるものだ」と同大学のニュースリリースで述べている。(HealthDay News 2025年1月10日)
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