14の精神疾患に共通する遺伝的リスクは大きく、5因子モデルで相当程度を説明
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
統合失調症や双極症などは、症状だけを見ると別々の疾患のように見える。しかし、これらを含む14種類の精神疾患の背後には、実は多くの共通した遺伝的リスクが存在することが、「Nature」に2026年1月8日に掲載された論文で明らかにされた1。
複数の精神疾患が発症することは稀ではなく2、また、諸精神疾患の間に共通する遺伝的シグナルは少なくないことが、近年のゲノム解析により明らかにされている3。疾患横断的な解析により、100以上の多面発現(プレオトロピック)遺伝子座が同定されているものの4、遺伝的影響として、各疾患に共通するもの、および各疾患に特有のものについての全体像は、依然として不明である。
米コロラド大学ボルダー校の心理学・神経科学准教授でAndrew Grotzingerらは今回、Psychiatric Genomics Consortium(PGC)のCross-Disorderワーキンググループによる3回目の大規模研究(CDG3)において、14種類の精神疾患を対象に、大規模GWASデータを用いて、精神疾患間に共通する遺伝的影響と各疾患に特有な遺伝的影響を明らかにしようと試みた。14種類の疾患とは、注意欠如・多動症(ADHD)、神経性やせ症(AN)、自閉スペクトラム症(ASD)、双極症(BIP)、大うつ病性障害(MD)、強迫症(OCD)、統合失調症(SCZ)、トゥレット症候群(TS)、アルコール使用症(AUD)、不安症(ANX)、心的外傷後ストレス症(PTSD)、ニコチン依存症(NIC)、オピオイド使用症(OUD)、大麻使用症(CUD)である。
これら14の精神疾患について、連鎖不平衡スコア回帰法(LDSC)を用いてゲノム全体の遺伝的相関を解析したところ、疾患間で広範な遺伝的重複が確認され、特に欧州系集団で顕著であった。LDSCはその性質上、遺伝子の重複を過少評価する恐れがあることから、二変量因果混合モデル(MiXeR)を用いて解析したところ、遺伝子の重複はLDSCで推定されるよりも大きく、共有される遺伝子シグナルの多くは、疾患間での効果が一致している遺伝子変異を反映することが示唆された。また、遺伝的リスクの違いは、数少ない共通する「不一致」の遺伝子変異、あるいは疾患特有の遺伝子変異に基づいて引き起こされることも示唆された。
さらに、14疾患の遺伝的重複をもとにゲノム構造方程式モデリング(genomic SEM)で遺伝的重複を調べ、共通の遺伝的リスクを表す因子としてモデル化したところ、5つの因子を用いたモデルが最適であることが示された(CFI〔Comparative Fit Index〕=0.971、標準化平方平均平方根残差〔Standardized Root Mean Square Residual;SRMR〕=0.063)。これらの5因子は、強迫症因子(AN、OCD、TS、ANX)、SB因子(SCZ、BIP)、神経発達因子(ASD、ADHD、TS)、内在化因子(MD、PTSD、ANX)、および物質使用症因子で、平均すると個々の疾患の遺伝分散の約66%を説明できた。多変量GWAS解析により、これらの因子は238のプレオトロピック遺伝子座と関連することが示された。特にSB因子および内在化因子は、高いレベルの多遺伝子オーバーラップと局所的な遺伝子の相関を示すと同時に、疾患特有の遺伝子座が極めて少ないことをも示した。
著者らは、「今回の研究は、現在、異なる名称で呼ばれている疾患が、実際には同じ生物学的プロセスによって引き起こされている可能性を示す、これまでで最も有力な証拠を提供するものだ」と述べている。(HealthDay News 2025年12月19日)
Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock
※本コーナーの情報は、AJ Advisers LLCヘルスデージャパン提供の情報を元に掲載しており、著作権法により保護されております。個人的な利用以外の目的に使用すること等は禁止されていますのでご注意ください。


