精神状態が良好なうつ病患者でも抗うつ薬中止で再発リスク上昇
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
抗うつ薬の中止を検討できるまで精神状態が良好なうつ病患者において、抗うつ薬を中止すると再発リスクが高くなるという研究結果が、「The New England Journal of Medicine」2021年9月30日号に掲載された1。
英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のGemma Lewis氏らは、英国の150カ所のプライマリケア診療所で治療中のうつ病患者(18₋74歳)を対象に、抗うつ薬を継続した場合と中止した場合とを比較するランダム化二重盲検試験Antidepressants to Prevent Relapse in Depression(ANTLER)を実施。2回以上のうつ病エピソードまたは2年以上の抗うつ薬服用歴があり、4種類の抗うつ薬(SSRI、NaSSA)のいずれかを投与されているうつ病患者で、抗うつ薬の中止を検討できるまで精神状態が良好と判断された478例(平均年齢54歳、女性73%)を対象とした。
これらの対象者を、投与中の抗うつ薬を継続する群(継続群;238例)と、抗うつ薬を1~2カ月かけて漸減して中止した後にプラセボのみを投与する群(中止群;240例)に1対1の割合でランダムに割りつけた。主要評価項目は、52週間の試験期間中に発生したうつ病の初回再発とした。副次評価項目は、抑うつ症状、不安症状、身体的症状、離脱症状、QOL、抗うつ薬またはプラセボを中止するまでの時間、および全般的気分評価(気分良好は1、気分の変化なし/気分不良は0)とした。Cox比例ハザードモデルとKaplan-Meier法を用いて解析した。
試験期間中の治療レジメンのアドヒアランスは、継続群で70%、中止群で52%であった。52週時までにうつ病が再発した患者の割合は、継続群(39%、238例中92例)よりも中止群(56%、240例中135例)で有意に高かった(ハザード比2.06、95%信頼区間1.56~2.70、P<0.001)。副次評価項目の結果も主要評価項目と同様の傾向が見られ、継続群よりも中止群で抑うつ、不安、離脱症状が多かった。
著者は、「プライマリケア診療所で治療中のうつ病患者では、抗うつ薬の中止を検討できるほど精神状態が良好でも、抗うつ薬を中止すると、継続した場合に比べ、52週時までのうつ病の再発リスクが高くなることが明らかになった」と結論付けており、付随評論2の著者は、「この結果は、ほとんどのプライマリケア医が知っていることであり、直感的に理解していることでもある。本試験およびその他の多くの試験の結果を踏まえると、うつ病患者に対するすべての治療法の選び方が理想的とは言えないのが現状である」と述べている。
なお、本試験のスポンサーは英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、資金提供者は英国立衛生研究所(NIHR;National Institute for Health Research)であり商業的関与はない。(HealthDay News 2021年9月29日)
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