自傷行為後の自殺リスクを評価する臨床評価ツールを開発
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
自傷行為のエピソードを持つ人が12カ月以内に自殺するリスクを、11個の因子に基づき予測できる臨床評価ツールが開発されたことが、「BMJ Mental Health」に2023年6月29日掲載された1。
英オックスフォード大学のSeena Fazelらは、スウェーデンの患者レジストリや死因レジストリなどのpopulation-basedの登録データを用いて、自傷行為後の自殺予測モデルOxford Suicide Assessment Tool for Self-harm(OxSATS)を開発し、検証した。登録データからは、2008年1月1日から2012年12月31日の間に非致死的な自傷行為〔ICD 10のX60-X84(故意の自傷および自殺)とY10-Y33(不慮か故意か決定されない事件、「詳細不明の事件」のY34は除外)〕を理由に救急外来や病院、専門家を受診した10歳以上の計53,172人を抽出。これらを、開発サンプル(37,523人)と検証サンプル(15,649人)に分けた。主要アウトカムを自傷行為により診療を受けた日(index date)から12カ月以内の自殺による死亡とすると、開発サンプルでは391人、検証サンプルでは178人がこれに該当した。
多変量加速故障時間モデルを用いてさまざまな自殺のリスク因子と自殺までの時間との関連を検討した。それにより、最終的なモデルに用いる因子として、1)年齢、2)性別(女性)、3)現在/過去のアルコール使用障害、4)現在/過去の薬物使用障害、5)過去3カ月以内の向精神薬による治療、6)向精神薬の過剰摂取、7)首吊りや窒息、8)index date以前の自傷行為歴、9)index date前12カ月間の自傷行為歴、10)1泊の入院、11)過去12カ月間での物質使用障害以外の精神障害の11個が特定された。このようにして構築されたモデルの内部データに対する予測の性能をブートストラップ法を用いて評価し、C統計量を算出した。また、SomersのDの算出による評価とROC曲線下面積(AUC)による評価も行った。
外部データを用いてこの11因子を用いた自殺予測モデルの性能を検証したところ、index date後6カ月と12カ月におけるC統計量は0.77〔95%信頼区間(CI)0.74-0.79〕と0.77(同0.75-0.78)、これらに対応するSomersのDは0.53(同0.48-0.58)と0.53(同0.49-0.57)であり、モデルは良好な判別能を有することが示された。12カ月以内に自殺する確率1%をカットオフ値として用いると、12カ月以内の自殺リスクに対するこのモデルの感度は82%(同75-87%)、特異度は54%(同53-55%)であった。次に、モデルでの予測リスクと実際に観察された自殺との一致度をO/E比(観測値と予測値の比)や較正(calibration)プロットを描いて評価したところ、index dateから6カ月以内では、O/E比が0.84(同0.70-1.01)、較正プロットの直線の傾きが0.82(同0.66-0.98)となり、モデルがリスクを過大評価している可能性が示された。一方、12カ月以内では、モデルによる予測はほぼ正確に行えた〔O/E比0.92(同0.79-1.06)、直線の傾き0.86(同0.69-1.03)〕。
著者らは、「本モデルを使うと、12カ月時点の自殺リスク予測は正確に行えるようだ。臨床の場でどれくらい有益性を発揮するかを確かめるためには、今後も検証を進めることと、効果的な介入へ結び付けることが必要になってくる。この予測法は、臨床的な意思決定や、人員などの医療資源の適正な配に役立つ可能性がある」と述べている。なお、OxSATSはウェブベースでリスクを計算することができる。(HealthDay News 2023年7月10日)
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