うつ病のCVDイベントリスクとの関連は特に女性で強い
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
うつ病とその後の心血管疾患(CVD)イベントとの間には、男女ともに有意な関連があり、特に女性で強いとする研究結果が、京都府立医科大学不整脈先進医療学講座の妹尾恵太郎氏らにより「JACC: Asia」に2024年3月12日発表された1。
妹尾氏らは、2005年1月から2022年5月の間にJMDC Claims Databaseに登録された、CVDや腎不全の既往がない18〜75歳の4,125,720人〔年齢中央値44(四分位範囲36〜52)歳、男性2,370,986人〕のデータを用いて、うつ病とその後のCVDイベントとの関連を検討した。対象者のうち、男性で9万9,739人(4.2%)、女性で78,358人(4.5%)にうつ病の診断歴があった。主要評価項目は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動の複合とした。
平均1,288±1,001日(範囲1〜5,534日)の追跡期間中に、男性では119,084件、女性では61,797件のCVD診断が記録されていた。Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、運動不足を調整して男女別に解析した結果、うつ病なし群に比べたうつ病あり群でのCVDイベント発生のハザード比(HR)は、男性で1.39〔95%信頼区間(CI)1.35-1.42、P<0.001〕、女性で1.64(同1.59-1.70、P<0.001)であり、女性での関連性の方が強かった。交互作用のP値は<0.001であったことから、うつ病とCVDイベント発生との関連性には性別の寄与が有意であることが示された。
うつ病あり群はうつ病なし群と比較して、CVDイベント発生のHRは男性および女性でそれぞれ、心筋梗塞では1.16(95%CI 1.04-1.28、P=0.008)および1.52(同1.24-1.85、P<0.001)、狭心症で1.46(同1.41-1.52、P<0.001)および1.68(同1.60-1.76、P<0.001)、脳卒中で1.42(同1.34-1.50、P<0.001)および1.56(同1.45-1.67、P<0.001)、心不全で1.28(同1.23-1.32、P<0.001)および1.64(同1.57-1.72、P<0.001)、心房細動で1.15(同1.07-1.24、P<0.001)および1.55(同1.37-1.76、P<0.001)であり、個々のCVDイベントについても女性での関連性の方が強いことが示された。さらに、いずれのCVDイベントについても、交互作用のP値は有意であった*a。
研究グループは、本研究は観察研究であり、うつ病とCVDイベント発生との因果関係を決定付けるにはさらなる研究が必要であることや、性別に関係なく、全ての患者に対してうつ病の定期的なスクリーニングと治療を標準的な臨床診療に組み込む必要があることに言及している。一方、論文の共著者である、東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏は、「うつ病は男女ともCVDと関連性を有しているが、それは特に女性で強い。このような結果をもたらす性に絡む因子を究明することで、女性のうつ病患者が有するCVDリスクに対処するための、的を絞った予防・治療戦略を策定できるようになるのではないか」と述べるとともに、「究明が進めば、うつ病患者は、男性でも女性でも最適な治療が受けられるようになり、CVD転帰の改善につながるだろう」と米国心臓病学会(ACC)のニュースリリース2の中で述べている。
なお、複数の著者が、医療機器・テクノロジー企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。 (HealthDay News 2024年3月15日)
注釈
*a
心筋梗塞:P=0.0173、狭心症:P<0.001、脳卒中:P=0.0350、心不全:P<0.001、心房細動:P<0.001
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