思春期における体型とメンタルヘルスとの間にはU字型の関連

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

思春期において、BMIにより分類した体型とメンタルヘルスとの間にはU字型の関連があることが、「JAMA Psychiatry」に2024年5月15日掲載された論文で明らかになった1

世界保健機関(WHO)によるHealth Behaviour in School-aged Children(HBSC)研究では、ヨーロッパと北米の思春期の若年者(11、13、15歳)を対象に4年おきに健康、生活満足度、行動に関するデータを収集している。英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のShanquan Chenらは、HBSCの直近(2002〜2018年)5回分の調査データを用いて、体型(BMIにより分類)とメンタルヘルスの関連を検討した。調査参加者の総計は1,036,869人(平均年齢13.55歳)で、うち527,585人(50.9%)は女子だった。メンタルヘルスについては、気になった心身の症状として、気分の落ち込み、イライラ感(易刺激性)、神経質・緊張感、睡眠の問題、めまい、頭痛、胃痛、腰痛・背部痛の 8種類を提示し、これらについて過去6カ月の間にどれくらいの頻度で感じたかを5段階(毎日〜滅多に/全くない)のリッカート尺度で評価してもらった。それぞれ0〜4点を与えてスコア化し、総スコア(0〜32点)を算出した(高スコアほど症状を感じた頻度が高い)。BMIはWHO基準により年齢と性別で標準化し、「BMI Zスコア」として体型分類に用いた。

一般化加法モデル(GAM)により、曝露因子はBMI Zスコア、アウトカムは症状とし、調査年、性別、両親との同居、兄弟姉妹の存在、学業上のプレッシャー、いじめられた経験、家庭の裕福度、スクリーンタイム、身体活動を調整した上で、BMI Zスコアと症状との関連を検討した。体型と症状との量反応関係についても、BMI Zスコアから体型を5つのカテゴリーに分け〔るい痩(low;≦−2)、低体重(underweight;−1.99〜−1)、標準体重(−0.99〜0.99)、過体重(1〜1.99)、肥満(≧2)〕、上述の因子を次々に追加する形で調整しながらGAMにより検討した。さらに、性別や学年と体型との相互作用を評価したほか、調査年との相互作用を考慮することで経時的な影響についても検討した。

その結果、体型と症状との間には一貫してU字型の関連のあることが確認された。共変量を調整して解析すると、症状の頻度は、標準体重の者と比べてるい痩の者では有意に多く〔非標準化偏回帰係数(β)0.14、95%信頼区間(CI)0.08〜0.19〕、低体重の者では有意に少なく(同−0.18、−0.22〜−0.15)、過体重と肥満の者では有意に多いという(過体重:同0.27、0.24〜0.30、肥満:同0.62、0.56〜0.67)、グラフ上でU字型となる関連が認められた。調査年、性別、学年ごとに層別化して検討しても、関連はU字型をしていた。

症状の頻度は、2002年と比較して2006年(非標準化β0.19、95%CI 0.11〜0.26)、2010年(同0.14、0.07〜0.22)、2014年(同0.48、0.40〜0.56)、2018年(同0.82、0.74〜0.89)には有意な増加が認められ、また、男子に比べて女子で(同2.27、2.25〜2.30)、小学生に比べて中学生(同1.17、1.14〜1.20)と高校生(同2.18、2.15〜2.21)で有意に多かった。

著者らは、「公衆衛生や教育の施策により、身体イメージに対する誤った認識を正し、健康的な体重を奨励し、また仲間同士で支え合えるような環境を作る際に、今回の結果は有用だろう」と述べている。(HealthDay News 2024年5月17日)

 

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参考文献

  1. Chen S, et al. JAMA Psychiatry. Publisher online May 15, 2024. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2024.0921