若年者のメンタルヘルス関連の救急受診が2011~2020年に急増、米調査
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
2011年から2020年にかけ、米国では若年者のメンタルヘルス関連の救急外来(ED)受診の割合が上昇したことが、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」2023年5月2日号に掲載された研究で分かった。米メイヨー・クリニックのTanner J. Bommersbachらによる報告1。
近年の米国では、若年者のメンタルヘルス関連のED受診の増加が懸念されてきたが、2016年以降の推移の検討は限られていた。そこでBommersbachらは、同国のED受診について年1回調査している「全米病院外来医療調査(NHAMCS)」の2011~2020年のデータを分析。特定されたED受診49,515件を用いて、小児期(6~11歳)・思春期(12~17歳)・若年成人期(18~24歳)におけるメンタルヘルス関連のED受診の推移を検討した。なお、メンタルヘルス関連のED受診は、精神障害または物質使用障害に関連し、退院時診断コードまたは受診理由コードにより6つのメンタルヘルス診断カテゴリ(気分障害、行動障害、物質使用障害、精神病、自殺行動、その他)のいずれかによると特定できるものとした。
その結果、若年者のED受診全体に占めるメンタルヘルス関連のED受診の割合は、2011~2012年の7.7%(加重受診数480万件)から2019~2020年には13.1%(同750万件)へと有意に上昇していた(年平均変化率8.0%)*a。メンタルヘルス関連のED受診はそれ以外のED受診と比較して、若年成人が多く小児は少なく、緊急と分類される可能性が高く、6時間以上の受診となる可能性が高かった(いずれも、多変量調整ロジスティック回帰分析、P<0.001)。
メンタルヘルス関連のED受診は、5歳ごとに区分したどの年齢層でも有意な直線的増加傾向が認められたが、10~14歳で特に顕著に増加していた(年平均変化率12.9%)*b。また、増加傾向は男性と女性のいずれでも認められた(年平均変化率6.7%*c、9.2%*d)。全ての診断カテゴリでED受診は増加しており、中でも自殺行動に関連した受診が若年者のED受診全体に占める割合は0.9%から4.2%へと上昇していた(年平均変化率23.1%)*e。次いで精神病(11.7%)*f、行動障害(10.0%)*g、気分障害(7.0%)*h、物質使用障害(6.0%)*iによる受診が続いた。
著者らは、「過去10年間で、若年者のメンタルヘルス関連の救急受診、特に自殺に関連した受診が急増していることが示された。一方で、メンタルヘルス関連の外来受診の伸びは認められていない。このような差を解消し、若年者のためのメンタルヘルスの外来診療と救急対応の不足を解消するには、国を挙げた取り組みが不可欠だ」と結論付けている。
なお、著者の1人が出版業界との利益相反(COI)を開示している。(HealthDay News 2023年5月3日)
注釈
*a
年齢、性別、人種および民族性で調整した修正ポワソンモデル、95%信頼区間(CI) 6.1-10.1%、P<0.001。
*b
年齢、性別、人種および民族性で調整した修正ポワソンモデル、95%CI 7.9-18.2%、P<0.001、交互作用に対するP値=0.04。
*c
年齢、性別、人種および民族性で調整した修正ポワソンモデル、95%CI 4.4-9.2%、P<0.001。
*d
年齢、性別、人種および民族性で調整した修正ポワソンモデル、95%CI 6.9-11.6%、P<0.001。
*e
年齢、性別、人種および民族性で調整した修正ポワソンモデル、95%CI 19.0-27.5%、P<0.001。
*f
年齢、性別、人種および民族性で調整した修正ポワソンモデル、95%CI 6.4-17.3%、P<0.001。
*g
年齢、性別、人種および民族性で調整した修正ポワソンモデル、95%CI 5.7~14.5%、P<0.001。
*h
年齢、性別、人種および民族性で調整した修正ポワソンモデル、95%CI 4.2~9.9%、P<0.001。
*i
年齢、性別、人種および民族性で調整した修正ポワソンモデル、95%CI 3.1~9.1%、P<0.001。
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