全成人のうつ病、65歳未満の不安障害のスクリーニングを推奨、米国予防医学専門委員会



提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、全成人に対するうつ病のスクリーニング、および65歳未満の成人に対する不安障害のスクリーニングを推奨する、との最終ステートメントを「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に2023年6月20日発表した1,2 。一方、同ステートメントでは、全成人に対する自殺リスクのスクリーニング、65歳以上の成人に対する不安障害のスクリーニングについては評価のためのエビデンスが不足しているとした。

米カイザー・パーマネンテ・エビデンスベース・プラクティス・センターのElizabeth A. O'Connorらは、プライマリケアの成人患者を対象としたうつ病と自殺リスクのスクリーニングおよび治療について、有益性と有害性を検討するために系統的レビューを実施3。研究105件が特定され、うち32件は計38万人超を対象とした一次研究、73件は計980万人超を対象としたメタ解析だった。

分析の結果、うつ病スクリーニングの有益性を調べたランダム化比較試験(RCT)8件において、スクリーニングの6~12カ月後、うつ病または臨床的に問題となる抑うつ症状の有病率の低下が認められた(統合オッズ比0.60)*a。精度の高いうつ病スクリーニング指標は複数あり、例えばPHQ-9 (Patient Health Questionnaire-9)でカットオフ値を10点とすると、研究47件において感度・特異度がともに0.85に達した*b。スクリーニングの明らかな害を示した研究はなかった。うつ病の心理学的治療・薬剤治療の有益性は系統的レビュー39件で検討され、多数のエビデンスがその有益性を支持していた。治療の害については、例えば、米国食品医薬品局(FDA)の承認に用いられた臨床試験では、第2世代抗うつ薬の使用による自殺企図の増加について検討されたが、絶対リスクの上昇は極めて小さいことが示された(抗うつ薬群0.7%対プラセボ群0.3%)*c。一方、自殺リスクについてはスクリーニングや治療による有意な改善は見られなかった。

USPSTFはこれらの結果を踏まえ、中程度の純利益があるという中程度の確実性のエビデンスに基づき、全ての成人(妊娠中・産後・高齢者を含む)に対するうつ病のスクリーニングを推奨する(推奨グレードB)1。一方、自殺リスクのスクリーニングの有益性と有害性を評価するにはエビデンスが不足しているとした(推奨グレードI)1

さらにO'Connorらは、プライマリケアの成人患者に対する不安障害のスクリーニングと治療について、有益性と有害性を検討するための系統的レビューも実施した4。研究59件が特定され、うち40件は計27万人超を対象とした一次研究、19件は計8万人超を対象としたメタ解析だった。

分析の結果、不安障害のスクリーニングの有益性は2件のRCTで検討されていたが、スクリーニングの13~22週間後、不安症状や精神症状の低減は認められなかった。不安障害のスクリーニング指標では、GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)とGAD-2は十分な正確性を有しており、例えばGAD-7でカットオフ値を10 点以上とした研究3件では、感度0.79、特異度0.89であった*d。スクリーニングの明らかな害を示した研究はなかった。不安障害の心理学的治療・薬剤治療の有益性は、26件のRCTと18件の系統的レビューで検討され、多くのエビデンスがその有益性を支持していた。例えば、不安症状を有するプライマリケア患者を対象とした10件のRCTでは、心理学的介入は重症度の低下に小さいながらも有意に関連し*e、一般成人を対象とした既存の系統的レビューではより大きい関連が報告されていた*f。ただし、高齢者における有益性のエビデンスは限られていた。

USPSTFはこれらの結果を踏まえ、中程度の純利益があるという中等度の確実性のエビデンスに基づき、65歳未満の成人(妊娠中・産後を含む)に対する不安障害のスクリーニングを推奨する(推奨グレードB)2。一方、65歳以上の高齢者に対するスクリーニングを評価するエビデンスは不足していると結論付けた(推奨グレードI)2

USPSTFメンバーのGbenga Ogedegbeは、「我々は、全ての成人における自殺リスクのスクリーニング、65歳以上の高齢者における不安障害のスクリーニングの有効性を判断するために、さらなる研究を緊急に求めている」と述べている5。(HealthDay News 2023年6月20日)

 

注釈
*a
統合オッズ比0.60、95%信頼区間0.50-0.73、I2=0%、n=10,244

*b
統合感度0.85、95%信頼区間0.79-0.89、特異度0.85、95%CI0.82-0.88、n=11,234

*c
オッズ比1.53、95%信頼区間1.09-2.15、n=40,857、追跡期間の中央値8週間

*d
統合感度0.79、95%信頼区間CI0.69-0.94、統合特異度0.89、95%信頼区間0.83-0.94

*e
標準化平均差-0.41、95%信頼区間-0.58--0.23、n=2075、I2=40.2%

*f
全般性不安障害、標準化平均差−0.80、95%信頼区間−0.93-−0.67、31件のRCT、NとI2は報告されていない

 

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Photo Credit: Adobe Stock

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参考文献
  1. US Preventive Services Task Force; Barry MJ, et al. JAMA. 2023 Jun 20;329(23):2057-2067.
  2. US Preventive Services Task Force; Barry MJ, et al. JAMA. 2023 Jun 27;329(24):2163-2170.
  3. O'Connor EA, et al. JAMA. 2023 Jun 20;329(23):2068-2085. うつ自殺 レポート
  4. O'Connor EA, et al. JAMA. 2023 Jun 27;329(24):2171-2184.不安 エビデンスレポート
  5. US Preventive Services Task Force: News Release. 2023 Jun 20. https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/sites/default/files/file/supporting_documents/sads-adults-final-rec-bulletin.pdf (2023年11月20日閲覧)
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