うつ病の家族歴は子の認知機能低下と関連

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

うつ病の家族歴、つまり祖父母や両親にうつ病歴があることは、子の認知機能の低下と関連するとした報告が、「JAMA Psychiatry」に2023年4月19日掲載された1

英グラスゴー大学のBreda Cullenらは、TGS(Three Generations at High and Low Risk for Depression Followed Longitudinally、87人)*a、ABCD(Adolescent Brain Cognitive Development)研究(10,258人)*b、Add Health(National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Health、1,064人)*c、およびUKバイオバンク(45,899人)*dの4つのコホートのデータを用いて、うつ病の家族性リスク、つまり両親・祖父母のうつ病罹患歴と認知機能との関連を調べた。評価は、うつ病の家族歴の有無、および多遺伝子リスクスコア(PRS)それぞれについて、回帰モデルを使用して行った。

3つの若年コホート(TGS、ABCD、Add Health;6~42歳)では、家族歴があることは、認知機能のうち、主に記憶領域の機能低下と関連しており、この関連には教育歴や社会経済的地位(SES)も一部関与している可能性が示された(参考文献1のFigure1~3ならびにSupplement 1 eFigure 1~12参照)。これに対し、対象者の年齢が高い(44~83歳)UKバイオバンクコホートにおいては、家族歴があると処理速度、注意、実行機能の成績が低下するという関連が認められ(参考文献1のFigure 4参照)、この結果は教育歴やSESで調整しても大きく変わらなかった。この関連性は、うつ病の者を除外すると幾分か弱まったものの、神経系の疾患を持つ者を除外してもほとんど変わらなかった。一次解析での各コホートでの最大の標準化平均差は、TGSで−0.72(95%CI −1.54〜−0.10)、ABCDコホートで−0.09(同−0.15〜−0.03)、Add Healthで−0.16(同−0.31〜−0.01)、UKバイオバンクコホートで−0.10(同−0.13〜−0.06)であった。

次にUKバイオバンクコホートにおいて、PRSの高リスク群と低リスク群とを比較したところ、認知機能テストの18項目中16項目で高リスク群の成績が有意に低かった(参考文献1のFigure 4B参照)。この結果は、家族歴の場合と同様、教育歴やSESで調整しても、あるいはうつ病や神経系の疾患を持つ者を除外しても、類似したものであった(参考文献1のSupplement 1 eFigure 24〜25参照)。効果量は小さかった。PRSを用いた解析は、ABCDコホートとAdd Healthコホートでも行われたが、結果は概ね同様であった。

著者らは、「祖父母や両親のうつ病は、子の認知機能の低下と関連していることが示された。今後の課題は、なぜこのようなことが生じるのか、その経路を解明することだ」と述べている。

なお、1人の著者が、出版業界との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年4月21日)

 

注釈
*a
TGS:女性48%、平均年齢(SD)19.7(6.6)歳

*b
ABCD研究:女性48%、平均年齢(SD)12.0(0.7)歳

*c
Add Health:女性49%、平均年齢(SD)37.8(1.9)歳

*d
UKバイオバンク:女性51%、平均年齢(SD)64.0(7.7)歳

 

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参考文献

  1. Cullen B, et. al. JAMA Psychiatry. Published online April 19, 2023. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2023.0716