神経発達障害の心理社会的リハビリテーションに仮想現実や拡張現実を使うと有効か

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

神経発達障害者に対する心理社会的リハビリテーションに仮想現実(VR)または拡張現実(AR)を用いることの効果についてシステマティックレビューを実施したところ、対象研究の大半が、予備的な段階の結果ながら、対象者の機能的パフォーマンスが向上したと報告していることが示された。このシステマティックレビューの詳細は、「Frontiers in Psychiatry」に2022年12月14日掲載された1

シンガポール工科大学(シンガポール)のBing-Lee Tanらは、1)神経発達障害を持つ成人に対する介入におけるVRまたはAR技術がどれほど展開されているか、2)VRまたはARを用いた心理社会的リハビリテーションプログラムがどれほど効果を上げているか、を評価する目的で、システマティックレビューを実施した。対象とした研究の主な適格条件は、2012年6月から2022年6月の間に発表された、統合失調症/統合失調感情障害、自閉スペクトラム症(ASD)、知的障害(ID)、注意欠如・多動症(ADHD)〔IDとADHDを合わせて知的発達症(IDD)としている場合も含む〕に対するVRまたはARを用いた介入に関するランダム化比較試験(RCT)、非RCT、準実験的研究、介入前後比較試験などで、対象者の半数以上が上記の神経発達障害の診断を受けていることであった。バイアスのリスクは、RCTはコクランリスクオブバイアス2.0(RoB2.0)により、それ以外の研究はROBINS-I(Risk of Bias in Non-randomized Studies of Interventions)により評価した。

最終的に、38件(RCT 13件、準実験的研究6件、単群の介入前後比較試験19件)の研究が選択された。ARを用いた介入に関する研究は3件で、残りはVRに関する研究であった。介入では、仮想シナリオが、ヘッドマウントディスプレイやコンピューターの画面、モバイルデバイス、Cave Automatic Virtual Environment(CAVE;没⼊型ディスプレイ)環境の部屋などに表示されていた。また、このシステマティックレビューで対象とした研究の中には、音声認識、視線計測、人工知能(AI)アルゴリズム、もしくはモーションキャプチャなど、リハビリ中の対象者にリアルタイムでフィードバックできるデバイスが利用されていた。

介入効果が検討された機能分野は、セルフケア/地域社会での生活(11件)、職業スキルと雇用(15件)、社会的スキルと社会参加(9件)、QOL(3件)の4分野だった。セルフケア/地域社会での生活に取り組んだ研究のうち4件では、町や施設のシミュレーションを通して地域社会の中での移動やナビゲーション能力の訓練を行っていた。その他の研究では、運転の機能的スキルの訓練(2件)、日常生活動作の訓練(3件)、認知機能のリハビリを地域社会で生活するためのスキルに組み込んだ訓練(2件)に取り組んでいた。

職業スキルと雇用に取り組んだ研究のうち、9件は面接の訓練を行っており、残りの6件は、保護雇用も含めた雇用につなげるための職業スキル訓練を職業リハビリテーションプログラムの中で実施していた。社会的スキルと社会参加に取り組んだ研究では、いずれもVRを用いて、社会的認知や社会的注意などの訓練を行っていた。その大半は、さまざまな社会的シナリオの中で対象者をアバターと交流させる内容だった。QOLに取り組んだ3件の研究も全てVRを用いた介入がASDや治療抵抗性統合失調症/統合失調感情障害の人のQOL改善につながるのかを検討していた。今回対象とした研究のほとんどで、評価対象とした機能的分野の改善について、予備的な段階の結論ではあるが、期待の持てる結果が報告されていた。ただし、いくつかの研究では、対象者数が少なかった。またバイアスのリスクについては、RCTの4件で「高い」、その他の研究では18件で「深刻」、5件で「深刻で重大」と判定された。

著者らは、「VRとARが持つ有用な側面をうまく利用し、さらに他の技術をこれらに組み込むと、神経発達障害の治療成績が伸びるのではないか」と述べている。(HealthDay News 2023年1月23日)

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参考文献

  1. Tan BL, et. al. Frontiers in Psychiatry. Published online December 14, 2022. doi: 10.3389/fpsyt.2022.1055204