Fitbitのデータを用いた機械学習アルゴリズムで双極症の症状を把握

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

スマートウォッチのFitbitで収集したデータを用いて、双極症(bipolar disorder;BD)患者の抑うつ状態と軽躁/躁状態(以下、躁状態)の症状を検出する個別化された機械学習(machine learning;ML)アルゴリズムを開発し、テストセットで高い予測能を達成したとする研究結果が、「Acta Psychiatrica Scandinavica」に2024年10月13日掲載された1

BDを効果的に治療するためには、抑うつ状態や躁状態を遅滞なく把握して対応することが重要である。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJessica M. Lipschitzらは、Fitbitにより個々人から受動的に得られたデータを、MLによるアプローチでBD患者の抑うつおよび躁症状をどれだけ正確に検出できるかを評価した。対象は、BD患者の認知的・心理社会的機能に関する継続中の縦断研究参加者の中から募集した54人(平均年齢40.3歳、女性74.1%、白人77.8%)とし、9カ月にわたってFitbitを装着してもらい、睡眠(睡眠・覚醒時間、深睡眠やレム睡眠など)や活動(安静時や活動時の時間など)、心拍数に関するデータを連続的に収集した。また、2週間ごとに、抑うつ状態の程度をPatient Health Questionnaire-8(PHQ-8)により、躁状態の程度をAltman Self-Rating Mania Scale(ASRM)により、それぞれ評価した(いずれも自記式)。PHQ-8は10点、ASRMは6点をそれぞれカットオフ値とし、カットオフ値以上を臨床的に意味のある状態とした。

MLアルゴリズムは、ランダムフォレストと一般化線型混合モデルの手法を組み合わせた二値混合(Binary Mixed Model;BiMM)フォレストが他の標準的な手法よりも優れた性能を示すという仮説を立て、6つの一般的なMLアルゴリズム(ロジスティック回帰、正則化ロジスティック回帰、サポートベクターマシン〔SVM〕、eXtreme Gradient Boosting〔XGBoost〕、ランダムフォレスト、正則化ランダムフォレスト)と比較した。対象者から得られたデータのうち、時系列に基づき最初の84%をMLアルゴリズムの学習に用い、残りを最適モデルの性能テストに用いた。

その結果、予想通り、検討したMLアルゴリズムの中では、BiMMフォレストが最も高いROC曲線下面積(AUC)を達成した。AUCは、カットオフ値以上の抑うつ状態の予測に関しては0.847、カットオフ値以上の躁状態の予測に関しては0.829であった。テストセットでBiMMフォレストのカットオフ値以上の抑うつ状態および躁状態の予測能を検証したところ、AUCは抑うつ状態で0.860、躁状態で0.852であった。YoudenのJ統計量に基づく最適閾値(抑うつ状態で0.536、躁状態で0.340)を用いた場合、予測の正解率(accuracy)は抑うつ状態で80.1%(感度71.2%〔95%信頼区間59.3-83.1%〕、特異度85.6%〔同78.4-92.8%〕)、躁状態で89.1%(感度80.0%〔同60.0-100%〕、特異度90.1%〔85.1-94.3%〕)であった。

著者らは、「従来の手法は、コンプライアンスの高い患者、特殊な機器を利用し得る患者、プライバシーの領域に踏み込まれるデータを提供してもよいとする患者に限定されていた感があったが、今回の方法は、患者に広く使える、個別化されたアルゴリズムを構築することに一歩近づいたものと考える」と述べている。

なお、複数の著者が、製薬企業および関連組織との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年12月3日)

 

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参考文献

  1. Lipschitz JM, et al. Acta Psychiatrica Scandinavica. Published online October 13, 2024. doi: 10.1111/acps.13765