
2018〜2021年の米国、外来精神療法の受診割合が増加、向精神薬を処方される割合は減少
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
2018~2021年の米国では、外来で精神療法を受ける患者の割合は増加した一方、精神療法なしで向精神薬の処方のみを受ける患者の割合は減少したことが、「The American Journal of Psychiatry」に2025年5月1日掲載された論文で明らかになった1。
米コロンビア大学および米ニューヨーク州立精神医学研究所Mark Olfsonらは、米国民を対象とした医療費に関する大規模調査であるMedical Expenditure Panel Survey(MEPS)の2018年から2021年までの4回分の調査データを用いて、近年の外来における精神療法の利用状況の傾向を分析した。対象は、精神障害に関連する外来診療を1回以上受けた成人17,821人で、うち精神療法を受けたのは6,415人であった。精神療法は、メンタルヘルスの専門家と患者の間の対話や会話を中心に行う治療と定義し、個人療法、家族療法、グループ療法を含めた。対象者を、「精神療法のみ受けた」「向精神薬の処方のみ受けた」「精神療法と向精神薬の処方の両方を受けた」で3群に分類した。向精神薬は、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬・睡眠薬、精神刺激薬または抗ADHD薬、気分安定薬(てんかんを除く)とした。この他、精神療法の年間実施回数、治療提供者の職種(精神科医、心理士、ソーシャルワーカーなど)、精神療法にかかった総医療費(2021年ドル換算で比較)も調べた。
2018年から2021年にかけてのメンタルヘルスの外来診療における治療形態の年次変化をロジスティック回帰モデルで分析すると、精神療法のみを受けた割合は2018年の11.5%から2021年の15.4%へと有意に増加していたが(年齢・性別・苦痛[distress]で調整後の差=2.8%、95%信頼区間〔CI〕0.6〜5.0)、向精神薬の処方のみの割合は67.6%から62.1%へと有意に減少していた(年齢・性別での調整後の差=−4.5%、95% CI=−6.9〜−2.1)。精神療法と向精神薬処方の併用の割合には有意な変化が見られなかった(2018年:20.8%→2021年:22.5%)。精神療法を受けた患者1人当たりの精神療法の平均受診回数は、9.8回から11.8回へと有意に増加していた(調整平均差〔β〕=2.1、95%CI0.6〜3.7)。一方、精神療法を受けた回数が1〜2回の患者の割合は、33.9%から27.9%へと有意に減少していた(β=−6.9、95%CI −11.3〜−2.5)。精神療法に対する年間国民医療支出額は、308億ドルから510億ドル(1ドル145円換算で4兆4660億円から7兆3950億円)へと有意に増加していた(Z検定、Z=3.0、P=0.003)。精神療法を提供した職種別に検討したところ、精神科医や心理士から精神療法を受けた患者は減少した一方で(精神科医:41.2%→34.1%、心理士:31.8%→20.7%)、ソーシャルワーカーやメンタルヘルスカウンセラーから精神療法を受けた患者は増加していた(37.7%→53.6%)。
著者らは、「精神療法を精神科医から受ける患者の割合は低下していたことから、精神科医にとって、患者を医師以外の精神療法を行う職種に紹介し、連携・協働することの必要性は高まっていると考えられる。また、精神療法を、心理士ではなくソーシャルワーカーやカウンセラーが行う機会は増加しており、患者1人当たりの精神療法の平均受診回数も増加している。さらに、精神療法受診が1〜2回だけという患者の割合が減少したことは、早期の脱落が減ったことを示していると言えるだろう。これらのことから、精神療法を希望し、かつ続けて受けたいとする米国人の意欲は高まっているものと考えられる」とプレスリリースの中で述べている2。(HealthDay News 2025年5月8日)
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