若年者のメンタルヘルス関連の入院が25%増、2009~2019年の米調査

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

メンタルヘルス関連の診断で入院する若年者が、実数でも入院全体に占める比率でも増加しつつあるという米国の研究報告が、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」2023年3月28日号に掲載された1。さらに、2019年にメンタルヘルス関連で入院した若年者の多くで自殺企図、自殺念慮、自傷行為が認められたという。

Kids' Inpatient Database(KID)は、米国の急性期病院における若年者の退院について約3年ごとに調査している最大規模のデータベースである。米Dartmouth Health Children'sのMary Arakelyanらは、KIDの2009~2019年の4回の調査データを用いて、若年者のメンタルヘルス関連の入院について後ろ向きに分析。重み付けして全米の推定値を算出し、全4,767,840件を解析対象とした。メンタルヘルス関連の診断を主因とした入院は、小児思春期メンタルヘルス障害分類システム(CAMHD-CS)のコードを用いて特定した。

その結果、3~17歳の若年者におけるメンタルヘルス診断を伴う入院は、2009年に160,499件、2012年に171,570件、2016年に188,549件、2019年に201,932件であり、調査期間中に25.8%増加した。2019年にメンタルヘルス関連で入院した者の61.1%が女性で、49.5%が15~17歳であった。

メンタルヘルス関連の診断のうち最も高頻度であったのは、全ての調査年でうつ病性障害であり、2009年の47,597件(29.7%)から2019年の114,710件(56.8%)へと上昇した*a。また、2009年から2019年にかけて、摂食障害は1,850件(1.2%)から4,262件(2.1%)へ*b、不安障害は2,059件(1.3%)から3,689件(1.8%)へと*c、いずれも約2倍となった。さらに、自殺企図・自殺念慮・自傷行為を伴うメンタルヘルス関連の入院は、49,285件(30.7%)から129,699件(64.2%)へと、実数もメンタルヘルス関連の入院に占める比率も有意に上昇した*d

医療利用の傾向について調べたところ、全入院の中でメンタルヘルス関連の入院が占める比率は、2009年から2019年にかけて入院件数では11.5%から19.8%へ*e、入院総日数では22.2%から28.7%へ*f、施設間転院では36.9%から49.3%へと*g、いずれも有意に上昇した。2019年のメンタルヘルス関連の入院は、メンタルヘルス関連でない入院と比較して、平均入院期間(LOS)が有意に長く(4.7日対2.6日、発生率比1.6、95%信頼区間1.5-1.8、Poisson regressions)、全ての調査年で同じ傾向が認められた。同様に、2019年のメンタルヘルス関連の入院は、施設間転院率も高かった(10.9%対2.8%、オッズ比4.3、95%信頼区間3.6-5.2、logistic regressions)。

本解析は急性期病院におけるものであり、精神科病院への入院や、入院に至らない救急受診は含まれない点に留意する必要がある。その上で、著者らは「米国では小児思春期の急性期病院への入院の中で、メンタルヘルス関連が占める実数と比率は増加傾向にあり、2019年にはこうした入院の3分の2近くに自殺や自傷が影響していた。この結果から、メンタルヘルスの悪化が米国の若年者の健康に与える影響が増大していることが懸念される」と結論付けた。(HealthDay News 2023年3月28日)

 

 

注釈
*a
2009年29.7%(95%CI 27.9-31.4%)対 56.8%(95%CI 54.5-59.1%)、p値記載なし、χ2 tests with Rao-Scott corrections。

 

*b
2009年1.2%(95%CI 0.8-1.5%)対2019年2.1%(95%CI 1.6-2.7%)、P=0.008、χ2 tests with Rao-Scott corrections。

 

*c
2009年1.3%(95%CI 1.1-1.5%)対2019年1.8%(95%CI 1.6-2.1%)、p値記載なし、χ2 tests with Rao-Scott corrections。

 

*d
0.7%(95%CI 28.6-32.8%)対2019年64.2%(95%CI 62.3-66.2%)、p値記載なし、χ2 tests with Rao-Scott corrections。

 

*e
2009年11.5%(95%CI 10.2-12.8%)対19.8%(95%CI 17.7-21.9%)、P<0.001、weighted logistic regressions。

 

*f
2009年22.2%(95%CI 19.1-25.3%)対28.7%(95%CI 24.4-33.0%)、P=0.02、empirical null distribution created through parametric bootstrapping。

 

*g
2009年36.9%(95%CI 33.2-40.5%)対49.3%(95%CI 45.9-52.7%)、P<0.001、weighted logistic regressions。

 

 

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参考文献

  1. Arakelyan M, et al. JAMA. 2023 March 28;329(12):1000-1011.