統合失調症は特に女性のCVDイベントのリスク上昇と関連
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
統合失調症は、その後の心血管疾患(CVD)イベントのリスク上昇と関連しており、その関連の程度は男性よりも女性で強いことが、「Journal of the American Heart Association」に2024年2月27日掲載された論文で明らかにされた1。
統合失調症の症例の死因として、CVDが悪性新生物より多いことが報告されているが2-4、CVDリスクが男女間で差があるかについては判明していない。慶應義塾大学医学部循環器内科の小室仁氏らは、JMDC Claims Databaseの2005年1月から2022年5月の間のデータを用いてレトロスペクティブ解析を行い、統合失調症とCVDイベントリスクとの関連を明らかにし、その関連性に対する性差の寄与の程度を検討した。対象は、CVDや腎代替療法の既往のない18~75歳の4,124,508人〔年齢中央値44(四分位範囲33〜52)歳〕で、その内訳は、統合失調症なしが男性2,355,106人、女性1,738,061人、統合失調症ありが男性15,248人、女性16,093人であった。主要評価項目は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動、肺血栓塞栓症の複合とした。
平均1,288±1,001日の追跡期間中に182,158件のCVDイベント(男性119,827件、女性62,331件)が発生した。Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、運動不足を調整して男女別に解析した結果、統合失調症なし群に比べた統合失調症あり群でのCVDイベント発生のハザード比は、男性で1.42(95%信頼区間1.33-1.52)、女性で1.63(同1.52-1.74)であった。交互作用のP値は0.0049であったことから、統合失調症とCVDイベント発生との関連性には性別の寄与が有意であることが示された。同様にそれぞれのCVDイベントについて分析したところ、これと一致した結果が得られたのは、狭心症、心不全、および心房細動であった*a。
著者らは、本研究はレトロスペクティブな観察研究であり、明確な結論を得るためにはさらなる検討が必要としながらも、「この結果は、統合失調症患者、特に女性患者に対する支援を強化すべきことを示すものであり、精神科医、循環器医および総合診療医の間での共通認識にするとともに、特に女性患者のCVD予防のために役立てるべきだ」と述べている。
なお、複数の著者が、バイオ医薬品産業などとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年3月1日)
注釈
*a
*狭心症
男性:HR 1.33(95%信頼区間1.20-1.48)
女性:同1.53(1.38-1.70)
交互作用のP=0.0645
*心不全
男性:同1.42(1.29-1.56)
女性:同1.80(1.64-1.97)
交互作用のP<0.001
*心房細動
男性:同1.02(0.82-1.27)
女性:同1.44(1.09-1.90)
交互作用のP=0.0567
Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock
※本コーナーの情報は、AJ Advisers LLCヘルスデージャパン提供の情報を元に掲載しており、著作権法により保護されております。個人的な利用以外の目的に使用すること等は禁止されていますのでご注意ください。