Progress in Mind Japan RC
| テーマ |
第11回 Progress in Mind Japan RC Webinar 「神経疾患における不眠・うつ・不安の診かたと実践マネジメント」 |
| 開催日時 | 2025年12月11日(木)19:00~20:00 |
| 座長 | 髙橋良輔先生 (京都大学総合研究推進本部 参与 特定教授) |
| 演者 | 鈴木圭輔先生 (獨協医科大学 脳神経内科 主任教授) 稲田健先生 (北里大学 医学部精神科学 主任教授) |
プログラム
講演1.
「神経疾患におけるうつ・不安・不眠の対応:脳神経内科医の視点から」鈴木圭輔先生
● 神経疾患におけるうつ・不安・不眠の合併頻度
●合併する不眠・うつ・不安が神経疾患に及ぼす影響


● 神経疾患におけるうつ・不安・不眠への対応
● まとめ

Q&A
Q 現状では無症状であっても頭痛の既往はうつ病の発症に繋がるのか。
A 疫学研究では頭痛の既往がうつ病の発症リスクであることが示されています。おそらく、両者には脳幹や視床における共通の病態生理学的脆弱性が存在すると考えられます。(鈴木先生)
講演2.
「神経疾患におけるうつ・不安・不眠の対応:精神科医の視点から」稲田健先生
● 精神科医による診断、見立て、治療方針の決め方

●うつと睡眠障害の関係性
●パーキンソン病と不眠・うつ・不安の関係性

●精神科領域における多面的アセスメント/SDM/MBC

● まとめ

Q&A
Qうつ病が完全寛解した後の睡眠障害残存は何を基準に判断するのか。
A 研究により睡眠障害残存の定義は異なっています。睡眠障害の改善を得た上で睡眠薬を中止することは、うつ病再発予防の観点から残存の有無にかかわらず重要です。(稲田先生)
クロージング
髙橋先生: 本日は脳神経内科の鈴木先生、精神科医の稲田先生というお二人のトップエキスパートに神経疾患に伴う不安・うつ・不眠の診断方法とマネジメントについて、異なる立場からお話しいただきました。鈴木先生には精神症状を伴う神経疾患が多様であることを教えていただき、脳神経内科医が遭遇する神経疾患患者の精神症状の診かたを稲田先生にわかりやすく教えていただき、大変勉強になりました。視聴していただいた先生方にお役立ていただける内容であったと確信しております。鈴木先生、稲田先生、本日は誠にありがとうございました。
講演終了後/講演に関するディスカッション
●内因性うつ病と神経疾患に合併するうつ病の違い
鈴木先生:内因性うつ病に比べ、神経疾患に合併するうつ病は希死念慮、無価値感、罪責感が希薄な感触がありますが、この違いはどこから来るのでしょうか。
稲田先生:明確な理由は不明ながら、その1つとして神経疾患患者さんは疾患自体に起因する不安が先行して出現することが考えられます。
●神経内科が精神科に相談するタイミング
髙橋先生・鈴木先生:PDを例に挙げると、妄想に対して第二世代抗精神薬を一剤投与し、思うように改善しない場合に相談しているのですがいかがでしょうか。
稲田先生:適切なタイミングと思います。ご相談いただくのは “対応に難渋した段階”と考えていただければよく、例示されたように、症状が妄想なら第二世代抗精神薬、うつ症状であれば抗うつ薬を一剤投与したものの、良い結果に至らなければご紹介いただくのは適切と思います。
●神経疾患患者における精神症状の早期発見
髙橋先生:脳神経内科医が患者さんの精神症状を早期に発見するコツについてご教示ください。
稲田先生:“この患者さんには不安があるのではないか”と考えて確認してはいかがでしょうか。また、いきなり“不安ですか”とは聴きづらいので、睡眠の状況を聴いて、患者さんが眠れていないと答えたら、何か不安を抱えているのではないかと問うのがコツです。医師;眠れていますか→患者;眠れていません→医師;眠れていないのは心配事や不安があるからではないですかという形で問診すれば問題点を明らかにしやすいと思います。
●脳神経内科医、精神科医、患者およびステークホルダーによるSDM
鈴木先生:当院では精神科の先生には精神症状のコンサルテーションをすることはよくあり,併診していただく機会は多くあります。しかし精神症状を呈する神経疾患患者さんについて、特に難治例では両診療科による定期的な共同カンファレンスを開催するようにしたいと思います。
稲田先生:実現の可能性は別として、両診療科の医師が参加するSDMを実施することが理想です。当院の場合、現時点では精神症状治療目的に精神科病棟に入院してきた神経疾患患者さんを対象に、両診療科の医師が一緒に治療法を検討し、転院あるいは退院のタイミングで患者さんや家族を交えたSDMを行うというところにとどまっています。この手法を少しずつでも拡げていければいいのですが。
髙橋先生:両診療科のコラボレーションを実現するには、今は別々となっている精神科医と脳神経内科医の教育システムを改編する必要があると思います。Webinarで両先生からお話しいただいたように、精神・神経疾患のクロスオーバー症状を呈する患者さんには日常的に遭遇するわけで、お互いに協力を必要としているのは間違いありません。一緒にトレーニングを受けていれば両診療科のコラボレーションはより円滑に進むと思われますし、専門性が異なりながらも共通する基盤を有する医師たちが育成されるようになれば“脳神経内科医、精神科医、患者さんおよびステークホルダーによるSDM”の実行可能性が確実に高まると思います。
髙橋良輔先生から若手研究者へのメッセージ
私は医学生の頃から研究の道に進みたいと考えていました。特に、病気の根本原因を研究する、それも容易には解明できそうもない疾患にチャレンジしたかったので脳神経内科医を目指しました。臨床を身につけた上で研究を開始するという計画を立てていたのですが、あまりにも臨床が面白く、基礎研究に進むのはやめようかと思った時期もありました。しかし臨床現場にいた6年間で基礎研究も交えた病因究明の必要性を実感し、マウスやメダカのモデル動物を作製する研究も行いました。これまでの研究者としての歩みを振り返ると、神経疾患は単純ではなく、挑戦に値する深遠な領域だと改めて感じます。
今、私たち研究者は遺伝子と環境要因によって生じ、そこに老化という避けがたいライフコースの最終経路が関わる病態を対象にしています。この状況は神経疾患に限りませんし、完成された成果は容易には手にできないでしょう。換言すれば、多面的なアプローチが求められる状況にあるわけで、自分の得意とする手法、数学なら数理モデルを使い、人間に興味があるならQOL向上に資する方法を探求するなどの形での貢献が可能です。研究に終わりはありませんから飽きることもありません。自信を持って取り組んでください。
