研修医の労働時間、長くなるほど抑うつ症状が増加

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

研修医の労働時間の長さは抑うつ症状の増加に関連しており、週90時間を超えて働く研修医の3割以上がうつ病の基準を満たすという研究結果が、「New England Journal of Medicine」2022年10月20日号に掲載されたレターで報告された1

米ミシガン大学医学部のYu Fangらは、2009~2020年の4~6月に毎年募集されたIntern Health Studyに登録した全米の研修医1 7,082名を対象に、卒後1年目の労働時間と抑うつ症状の変化の関連性を調べた。

抑うつ症状は、研修期間の始まる1~2カ月前のベースライン時、および研修期間中の四半期ごとに、Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)を用いて評価。PHQ-9で0-4点は軽微、5-9点は軽度、10-14点は中等度、15-19点は中等度-重度、20-27点は重度に分類した。また、対象者の自己報告による直近1週間の労働時間、ストレスとなるライフイベント、医療ミスに関するデータを収集した。1週間の労働時間は、20時間以下から90時間超まで13段階に分類。共変量で調整し、層別化後にデータ欠損について重み付けしたモデルを用いて標準化し、研修医の労働時間別に見たPHQ-9スコアのベースライン時からの平均変化量を推定した。

その結果、ベースライン時の研修医のPHQ-9総スコアの中央値は2.0点、平均値と標準偏差は2.7±3.1点だった。四半期ごとに評価した1週間の労働時間の中央値は67時間、平均値と標準偏差は週63±19時間だった。研修医の労働時間が長いほど、PHQ-9スコアで評価した抑うつ症状の重症度カテゴリーは高くなり、労働時間が週90時間を超える場合、研修医の33.4%がPHQ-9スコアでのうつ病の基準(10点以上)に該当した。

標準化して分析した結果、労働時間が長いほど、PHQ-9スコアのベースライン時からの推定変化量は増加し、労働時間とスコア増加量との間には量反応関係が認められた。労働時間が週40-45時間の区分におけるPHQ-9スコアの推定増加量は1.8点(95%信頼区間1.7-2.0点)であったのに対し、労働時間が週90時間超の区分におけるPHQ-9スコアの推定増加量は5.2点(95%信頼区間4.9-5.6点)に達した。感度分析では、勤務施設に基づくクラスター分析も行ったが、結果は同様だった。

著者らは、「非医療専門職で一般的である週40-45時間の労働と比較すると、最も労働時間の長い90時間超の区分では、抑うつ症状のスコアの増加量は3倍近くになった。今回の結果から、研修医の週の労働時間を制限することで、キャリア初期の研修医のうつ病発症率を抑えられる可能性が示唆された」と述べている。(HealthDay News 2022年10月27日)

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参考文献

  1. Yu Fang, et al. New England Journal of Medicine Oct 20;387(16):1522-1524.