Ottawa Hospital Research Institute（カナダ）のDaniel T. Myranらは、オンタリオ州健康保険プラン（Ontario Health Insurance Plan；OHIP）の2017年3月1日から2021年3月10日までのデータから収集した、医師（レジデント、フェローも含む）34,055人分の健康管理データを用いて、集団ベースのコホート研究を実施。同州でのCOVID-19第一波のパンデミック（2020年3月11日〜2021年3月10日）と、医師のメンタルヘルスおよび物質使用障害に関連する外来受診（以下、外来受診）の変化との関連を調べた。解析には、自己回帰和分移動平均モデルと一般化推定方程式を用いた。解析対象とされた医師は、平均年齢41.7歳（標準偏差10.0歳）で、52.6％が男性（17,918/34,055人）、96.4％（32 841人）は都市部に居住し、専門分野としては家庭医（31.0％、10,561人）が最も多かった。

医師1,000人当たりの粗の年間外来受診者数は、パンデミック前の816.8人からパンデミック中には1,037.5人であり、27.0％増加していた。医師1人当たりの外来受診率は有意に上昇していた〔調整罹患率比（aIRR）1.13、95％信頼区間（CI）1.07-1.19〕。このような上昇は、性別（男性/女性^*a）、年齢（50歳以上/50歳未満^*b）、居住環境（都市部/地方^*c）、救急外来や病院でCOVID-19患者のケアに関わる頻度（まれ/より頻繁/なし^*d）という観点で分類したサブグループでもその傾向は認められたものの、いずれも、サブグループ内における有意差はなかった。パンデミック中の外来受診の相対的な増加は、過去2年間における外来受診歴のない医師（aIRR 1.72、95％CI 1.60-1.85）の方が、外来受診歴のある医師（同0.98、0.92-1.07）より有意に大きかった。1年以内にメンタルヘルス問題または物質使用障害に関連して外来を1回以上受診した医師の絶対割合（absolute proportion）は、パンデミック前の12.3％（4,027/32,706人）からパンデミック中には13.4％（4,225/31,472人）へと1.1％増加していた（調整オッズ比1.08、95％CI 1.03-1.14）。

著者らは、「今回の結果を見ると、医師のメンタルヘルスはパンデミック中に悪化したものと考えられる。このことに対しては、メンタルヘルスサービスへのアクセスをよりしやすくすること、また、例えば、医師が書く書類や事務作業の削減、報酬の適切な支払いなどの診療システムを改善すべきことなどの対策が必要だろう」と述べている。

なお、1人の著者が、本研究外におけるAstraZeneca社との利益相反（COI）に関する情報を明らかにしている。（HealthDay News 2022年2月2日）

注釈

*a
[性別]男性：aIRR 1.07、95%CI 0.97-1.18、女性：aIRR 1.16、95％CI 1.09-.125（P=0.10）。
 

*b
[年齢層]50歳以上：aIRR 1.10、95%CI 0.97
-1.24、50歳未満：aIRR 1.14、95％CI 1.07-1.21（P=0.55）。
 

*c
[居住環境]都市部：aIRR 1.13、95%CI 1.06-1.19、地方：aIRR 1.30、95％CI 0.84-2.00（P=0.72）。
 

*d
[救急外来や病院でCOVID-19患者のケアに関わる頻度]まれ（パンデミック1年目に1-5名）：aIRR 1.23、95%CI 0.89-1.70、より頻繁（6名以上）：aIRR 1.05、95％CI 0.77-1.43、なし（0名）：aIRR 1.13、95％CI 1.06-1.21（P=0.72）。

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