小児期においては差別経験がその後の自殺傾向の形成に関与
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
体重、人種・民族・肌の色、性的指向に基づく小児期の差別経験は、その後の自殺傾向(自殺念慮、自殺行動)の形成に関与するという研究結果が、「The Journal of Pediatrics」に2023年7月28日掲載された1。
米Uniformed Services University of the Health Sciences(米軍保健科学大学)のArielle T. Pearlmanらは、9〜10歳の小児1 2,000人以上を対象に2018年に開始されたAdolescent Brain Cognitive Development(ABCD)研究の参加者のデータを用いて、小児期における差別経験と自殺傾向との関連を検討した。まず、ABCD研究参加者本人またはその保護者に、ベースラインの時点で、年齢、出生時の性別、人種、世帯収入を尋ね、身長と体重を計測してBMIのzスコアを算出した。その1年後にABCD Youth Discrimination Measureと呼ばれる尺度を用いて、差別に関する調査を行った。この尺度は、過去12カ月間に、1)人種・民族・肌の色、2)外国出身であること、3)ゲイ、レズビアン、またはバイセクシュアルと見なされていること(性的指向)、4)体重、を理由に差別を受けた経験があるかを問うもので、「経験あり」「経験なし」「分からない」の3つで回答させた。さらにベースラインから2年後には、半構造化面接法であるKiddie Schedule for Affective Disorder and Schizophrenia(K-SADS)を用いて、最近(過去2週間)およびこれまでに、自殺念慮・自殺行動および抑うつ状態・うつ病があったかを回答させた。
2回の調査を完了した10,312人(ベースラインから1年後の調査時の平均年齢は10.92±0.64歳、女児47.6%)を対象に、ベースラインから1年後の調査時に報告された差別のタイプ(上記の1〜4)とその数(なし、1種類、2種類、それ以上)と、その1年後の自殺傾向(自殺念慮と自殺行動をまとめて扱った)との関連を、ロジスティック回帰モデルにより性別、人種・民族、年齢、世帯収入、これまでのうつ病罹患歴を調整して検討した(体重での差別のモデルではBMIのzスコアも調整)。
最も多かった差別は、体重に基づくもの(5.6%)で、人種・民族・肌の色(3.9%)、性的指向(3.5%)、国籍(1.5%)がその後に続いた。ベースラインから2年後の調査では、対象者の1.6%が直近2週間に自殺傾向のあったことが示された。解析の結果、体重〔オッズ比(OR)2.19、95%信頼区間(CI)1.13-4.24、P=0.025〕、人種・民族・肌の色(同3.21、1.60-6.44、P<0.001)、性的指向(同3.83、1.91-7.66、P<0.001)に基づく差別は、その1年後(つまりベースラインから2年後)の自殺傾向と有意に関連していた。一方、国籍に基づく差別と自殺傾向との関連は認められなかった(同2.54、0.81-7.92、P>0.05)。
また、2種類以上のタイプの差別を経験した小児(258人、2.6%)における自殺傾向のORは4.72(95%CI 2.28-9.74、P<0.001)と、差別を経験しなかった小児(8,851人、88.3%)の5倍近くに上った。
著者らは、「差別は、すでに小児期から自殺傾向の形成につながっている可能性がある。若年者が受けている差別や被害に対しては、臨床医は細心の注意を払って向き合うべきだ」と述べている。(HealthDay News 2023年8月28日)
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