家系的遺伝子リスクスコアは精神疾患の診断のその後の変化と関連

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

大うつ病(MD)、双極性障害(BD)、その他の非感情性精神病性障害(other nonaffective psychosis;ONAP)、および統合失調症(SZ)の家系的遺伝子リスクスコアが、精神疾患の診断のその後の変化と関連しているとの研究結果が、「JAMA Psychiatry」に2023年1月25日掲載された1

精神疾患は、時間の経過とともに症状が変化するなどして、当初の診断名とは違う診断名に変わることがある。米バージニアコモンウェルス大学のKenneth S. Kendlerらは、スウェーデンの住民を対象にした登録情報を用い、家系的遺伝子リスクスコア(family genetic risk score;FGRS)と、MD、BD、ONAP、およびSZの診断が後に変わる場合・変わらない場合との関係を評価した。本登録には、1950〜1955年にスウェーデン出身の両親のもとに同国で生まれた全ての人の2018年12月までのデータが含まれていた。この中から、MD、BD、ONAP、またはSZと診断され、さらにその後の追跡期間中に1回以上、これら精神疾患のいずれかと診断された269,097人〔女性64.3%、最初の診断時の平均年齢(SD)35.1(11.9)歳〕を本研究の対象として抽出した。最初の診断として最も多かったのはMDの235,095人であり、BDの11,681人、ONAPの16,009人、SZの6,312人がそれに続いた。FGRSは、1親等から5親等までの近親者が有する4種類の精神障害に対する罹患リスクを基に、同居効果を考慮して算出した。

追跡は平均(SD)13.1(5.9)年に渡り、追跡終了時の対象者の平均年齢(SD)は48.4(12.3)歳だった。診断が変わらなかった率で最も高かったのはMDの91.4%(214,793人)であり、次にSZの73.2%(4,621人)、BDの63.6%(7,428人)、ONAPの42.1%(6,738人)が続いた。

4種類の疾患全てにおいて、それぞれの最初の診断に対するFGRSが高いと診断が変わりにくい一方で、最後の診断に対するFGRSが高く、最初の診断に対するFGRSが低いと、診断が変わりやすかった。MD、BD、ONAP、およびSZの最初の診断が変更される程度を、多項ロジスティック回帰モデルでオッズ比(OR)を算出して検討した。FGRSが低い場合(1〜50パーセンタイル)と比べ、96〜100パーセンタイルと非常に高い場合では、ORが1.75以上となることが多かった。まず、MDのFGRSが「非常に高い」場合には、ONAP→MDのORは1.91(95%信頼区間1.59-2.29)、SZ→MDは同2.45(1.64-3.68)であった。次に、BDのFGRSが「非常に高い」場合には、MD→BDで同2.60(2.47-2.73)、ONAP→BDで同2.16(1.85-2.52)、SZ→BDで同2.20(1.39-3.49)となっており、ONAPのFGRSが「非常に高い」場合には、MD→ONAPで同1.80(1.62-2.02)、MD→SZで同1.95(1.58-2.41)、BD→SZで同1.89(1.39-2.56)で、SZのFGRSが「非常に高い」場合には、MD→SZで同1.80(1.46-2.23)、BD→SZで同1.75(1.25-2.45)となっていた。また、4種類の疾患全てにおいて、診断が変わらなかった群では、その診断のFGRSが他の3種類のFGRSに比べて高いという共通した特徴が見られた。

著者らは、「時間が経過するにつれ、臨床診断と遺伝的なリスクとは、一致の度合いが高まっていくようであり、このことは、これら疾患を診断する際、遺伝という面からの裏付けになると考えられる」と述べている。(HealthDay News 2023年2月22日)

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参考文献

  1. Kendler KS, et. al. Frontiers in Psychiatry. Published online January 25, 2023. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2022.4676