うつ病罹患は診断時の年齢や性別に関わらず認知症の発症リスク上昇に関与
提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
うつ病に罹患した場合、認知症リスクが上昇し、かつそれは診断時の年齢や性別とは関係しないことが、「JAMA Neurology」に2023年7月24日掲載された論文で明らかにされた1。
高齢者がうつ病に罹患した場合、引き続いて認知症を発症することはある。オーフス大学(デンマーク)のHolly Elserらは、若年期から中年期にかけてうつ病に罹患した場合、その後の認知症リスクがどうなるかを見るために、デンマークの全国レジストリ〔Danish National Patient Registry(DNPR)、Danish Civil Registration System(DCRS)、Danish Psychiatric Central Research Register(DPCRR)〕の1977〜2018年のデータを用いた全国規模のコホート研究を実施し、人生の早期(18~44歳)、中期(45~59歳)、および後期(60歳~)のうつ病罹患と認知症発症との関連を検討した。登録からは、246,499人の成人〔年齢中央値(IQR)50.8(34.7〜70.7)歳、女性64.7%〕がうつ病の診断を受けていたことが確認された。対照コホートとして、DCRSからうつ病の診断のない者をランダムに選び出し、うつ病の診断を受けた人と性別、生年を一致させた〔総計1,190,302人、年齢中央値(IQR)50.4(34.6〜70.0)歳、女性64.6%〕。うつ病の診断と認知症の診断はともに、ICD-10コードによった。追跡期間中央値(IQR)は、うつ病群で7.89(4.07〜13.30)年、対照群で9.04(4.87〜14.74)年だった。
うつ病と認知症との関連は、うつ病診断時の年齢(早期、中期、後期)、うつ病の診断日(index date)からの経過年数(1〜10年、>10〜20年、>20〜39年)、および性別で層別化し、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、教育歴、所得、心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、不安障害、ストレス障害、物質使用障害、双極性障害を調整して検討した。
うつ病群では、67.7%が60歳以前にうつ病の診断を受けていた。Cox比例ハザード回帰からは、うつ病群では対照群に比べて認知症の発症リスクが2.41倍高いことが示された〔ハザード比(HR)2.41、95%信頼区間(CI)2.35~2.47〕。この関連は、index dateからの経過期間が20~39年を超える場合(同1.79、1.58~2.04)でも、うつ病診断時の年齢が早期(同3.08、2.64~3.58)、中期(同2.95、2.75〜3.17)、後期(同2.31、2.25~2.38)のいずれの場合でも、ほぼ同様に認められた。なお、男性では女性より認知症のハザード比が高かった(男性:同2.98、2.84~3.12、女性:同2.21、2.15~2.27)。
著者らは、「うつ病に罹患すると、その後の経過時間や罹患時の年齢に関係なく、認知症リスクが高いまま維持されるというのがわれわれの仮説だったが、今回の結果はこれを裏付けるものとなった。加えて、男性も女性も、うつ病に罹患すると、認知症リスクは2倍以上となった。うつ病は認知症の初期症状であるというだけでなく、認知症リスクを上昇させる可能性がある」と述べている。
なお、1人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年7月24日)
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