うつ病治療を目的としたアクセプタンス&コミットメント・セラピーの効果と許容性を比較
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT;認知行動療法の一種)は、うつ病治療に有効であることが示唆されている1。ただし、ACTの実施形式として、個別実施、集団実施、インターネット配信、および個別/集団実施の併用のうち、どの形式が有効であるかは不明である。そこで、北京大学看護学院(中国)のYue Sunらは、ACTの実施形式それぞれの有効性、さらにはその許容性(ドロップアウトしない程度)を調べるため、これまで発表された研究についてネットワーク・メタアナリシス(NMA)などを実施した結果が「Journal of Affective Disorders」2022年9月15日号に掲載された2。
Pubmed、コクラン・ライブラリー、Embase、PsycINFO、CINAHL、CNKI、Wangfangのデータベース上に2021年3月21日までに公開された研究について、2名のレビュアーが、組み入れ基準(標準的なスケールに基づいて診断されたうつ病患者を対象としていること、ランダム化比較試験であること、ACTによる介入を受けていることなど)を満たしているか厳密に調べた上で、23件の研究(個別実施6件、集団実施9件、インターネット配信7件、個別/集団実施の併用1件、うつ病患者の総計690例)を抽出した。
NMAなどにより、4種類のACT実施群(個別実施群、集団実施群、インターネット配信群、個別/集団実施の併用群)、およびACTを受けていない対照群を含む計5つのグループ間において総当たり形式でACTの効果および許容性を比較した。研究間の異質性はI^2検定で評価し、異質性の高さを4段階に分類した。出版バイアスはEgger検定で評価した。エビデンスの質の評価には、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)を採用した。
その結果、対照群と比べて抑うつ症状が有意に改善したのは、ACTの個別実施群〔標準化平均差(SMD)=-1.44、95%信頼区間(CI)-2.11~-0.76、エビデンスの質 低〕、集団実施群(同-1.34、-1.91 ~0.78、中程度)、およびインターネット配信群(同-0.66、-1.25~-0.06、低)であった一方で、個別/集団実施の併用群では抑うつ症状の有意な改善は認められなかった。これら対照群との比較以外の群間比較、つまり4種類のACT実施群の間での比較では、効果の有意差は認められなかった。許容性については、いずれの群間の比較においても、有意差は認められなかった。
著者らは、「抑うつ症状に対する介入として有効なACTの実施形式は、個別実施、集団実施およびインターネット配信であると考えられる。うつ病患者の置かれている状況は様々であり、病状も患者によって異なっていることから、ACTの実施・普及・提供を容易にするためには、効果的で許容性の高い方法をいくつも試してみるべきだ。今後の研究では、うつ病の管理を目的として、電話によるACTまたは複数の形式を組み合わせたACTを実施した場合の効果を検証すべきだろう」と結論付けている。(編集協力HealthDay)
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