APA-Depression

名称

Practice Guideline for the Treatment of Patients with Major Depressive Disorder Third Edition
 

対象疾患

Major Depressive Disorder
 

最新版

2010年版
 

ガイドラインURL/書誌事項

https://psychiatryonline.org/pb/assets/raw/sitewide/practice_guidelines/guidelines/mdd.pdf (2025年10月23日閲覧)

 

作成主体

American Psychiatric Association(APA)

The American Psychiatric Association(アメリカ精神医学会)は、健康とウェルビーイングを担うメンタルヘルスの推進を促す、精神医学団体である。精神疾患の診断基準・分類として広く用いられているDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)を出版している。各種精神疾患に苦しむ人々が適切なケアを普遍的かつ公平に受けられるようにすること、精神医学教育と研究を促進すること、精神医学に携わる専門職の発展と学会員のニーズに応えることをミッションとして掲げている。
 

作成主体URL

https://www.psychiatry.org/ (2025年10月23日閲覧)

アメリカ合衆国
 

概要(作成背景、プロセス、予定等)

APAのMajor Depressive Disorder(MDD)に対するガイドラインの初版は1993年に出版され、2000年、2010年に改訂され、2010年以降は改訂されていない。そのため本ガイドラインの最新版である2010年版は、当時のDSM-IV-TRの診断基準に基づいて精神科医が診断した成人MDDに対する具体的な治療アプローチをまとめたものとなっている。 

本ガイドラインは、旧バージョン(2000年出版)作成時以降に報告されたランダム化試験、ランダム化試験からエビデンスが得られなかった場合にはランダム化試験以外の試験や症例集積などからも情報を得た。収集した情報をもとに、うつ病の臨床および研究の専門家から構成される作業部会によりガイドラインの早期草案が作成され、広範なレビューを経て改訂され、さらに最終草案は企業などとの利益相反のない専門家から構成される独立審査委員会により審査され、その後APA総会および理事会による承認を得て完成した。

本ガイドラインは、以下の3つのパート(パートA:治療に関する推奨事項、パートB:背景情報と入手可能なエビデンスのレビュー、パートC:今後の研究のニーズ)から構成されている。

I.概要
a)推奨の分類
b)推奨の要約

II.治療計画の策定と実施
a)精神科における管理
b)急性期
c)継続期
d)維持期
e)治療の中止

III. 治療計画に影響を与える特定の臨床的特徴
a)精神医学的要因
b)人口統計学的および心理社会的要因
c)併存疾患

IV.疾患の定義、疫学、自然史、経過
a)疾患の定義
b)疫学
c)自然史および経過

V.入手可能なエビデンスのレビュー
a)急性期における身体的治療
b)心理療法
c)薬物療法+心理療法
d)急性期における薬物療法への不応
e)継続期治療
f)維持期治療

VI.将来的な研究のニーズ
 

急性期における薬物療法として、抗うつ薬を軽度、中等度、重度とすべての重症度のMDDに対する初期治療選択肢として推奨している。また、治療抵抗性を示すうつ病に対して抗うつ薬以外の薬物療法を用いた増強療法についても記されている。薬剤の選択にあたっては、主に予想される副作用、個々の患者における安全性・忍容性、薬剤の薬物動態学的特性(半減期、CYP450に対する作用、その他の薬物相互作用など)、および過去のエピソードにおける治療反応性、費用、患者の希望などの追加要因に基づいて行うこととしている。

治療継続期には、再発の兆候がないか注意深く観察し、症状、副作用、服薬遵守、および機能状態の体系的な評価を行うことを推奨する。過去に3回以上のエピソードを経験した患者、または慢性MDDの患者は、継続期を完了した後に維持期療法を行うべきである。また、慢性や再発をくり返すケースや、併存疾患や他精神疾患の併存が認められるケースでは、長期にわたる維持療法を必要とする。ただし、維持療法を行うかどうかの判断に際しては、患者の希望なども考慮されるべきとしている。薬物療法を中止する場合には、少なくとも数週間かけて徐々に減薬していくこと、中断症状を防ぐため、急な服薬中止を避けるよう指導することが重要とされている。

なお、現時点で次の改訂版の出版予定に関する公式な発表はない。

 

 

ポイント監修Drに訊く ここがポイント

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●    DSMを作成したAPAが作成したこともあり、治療にあたる際の、診断の手順や評価方法などマネジメントにあたる部分の記載が診療が日常診療とマッチし有用です
●    ただ、発行が古く2010年であるため、診断基準はDSM-IV-TRであり、記載されている薬剤やエビデンスも15年程前のものとなっています
●    このガイドラインは「広範な文献収集とレビュー」に基づいていますが、系統的レビューや定量的統合(メタ解析)によるエビデンスの重みづけは行われていない点が特徴です
●    推奨の多くはエキスパートコンセンサスに依拠している部分があり、エビデンスレベルの厳密な序列づけは後年のガイドラインほど明確ではありません

 

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