NICE-Depression in adults: treatment and management

名称

Depression in adults: treatment and management
 

対象疾患

Depressive Disorder in Adults
 

最新版

2022年版
 

ガイドラインURL/書誌事項

https://www.nice.org.uk/guidance/ng222
(2025年4月8日閲覧)
 

作成主体

National Institute for Health and Care Excellence(NICE)

NICEは、イングランドNational Health Service(NHS)とウェールズNHSに属する機関である。エビデンスに基づくベストプラクティスと医療経済の専門機関として、納税者にとっての価値を確保しつつ、医療従事者やコミッショナーが患者に最良の医療を迅速に提供できるように支援する役割を担い、医療従事者や介護従事者にとって有用で実用的なガイドラインの作成を行っている。ガイドラインの作成にあたっては費用対効果の評価も行われており、健康アウトカムの尺度には主に質調整生存年(QALY)が用いられ、増分費用対効果比 (ICER) を算出することにより費用対効果を検討している。

NICEが提唱する各種ガイドラインは、以下のURLより検索できる。
https://www.nice.org.uk/guidance/published?sp=on
(2025年8月25日閲覧)
 

作成主体URL

https://www.nice.org.uk/
(2025年8月25日閲覧)
 

イギリス
 

概要(作成背景、プロセス、予定等)

NICEは、本ガイドライン(成人のうつ病に対するガイドライン(NG222))の他にも下記の2つの臨床ガイドラインを策定している。
・小児・若年のうつ病に対するガイドライン(NG134)
・慢性身体疾患を有する患者のうつ病に対するガイドライン(CG91)

本ガイドラインの2022年版では、以下の項目が網羅されている。
1.1 ケアの原則
1.2 認識と評価
1.3 治療法の選択
1.4 治療の実施
1.5 非重度のうつ病の新エピソードに対する治療
1.6 重度のうつ病の新エピソードに対する治療
1.7 うつ病の行動的カップル療法
1.8 再発予防
1.9 二次治療:併用/代替療法 等
1.10 慢性抑うつ症状
1.11パーソナリティ障害の診断を受けた患者のうつ病
1.12 精神病性うつ病
1.13うつ病に対する電気けいれん療法
1.14 うつ病に対する経頭蓋磁気刺激療法
1.15 治療抵抗性うつ病
1.16 ケアへのアクセス、調整、提供

2022年版には2009年版からの更新箇所が明記されており、治療の選択について、患者と「治療により何を得たいか」「どのような医療従事者のもとで治療を行っていきたいか」などを議論して希望を聞き取ることや、患者の意見と嗜好の記録を他の医療従事者と共有して、患者と信頼関係を構築することの重要性に関する記載が追加されている(1.3 治療法の選択)。

また、うつ病に対する薬物療法について、非重度のうつ病に対しては本人の希望がない限り抗うつ薬を第一選択治療として日常的に処方しないよう注意喚起されている(1.5 非重度のうつ病の新エピソードに対する治療)。重度のうつ病に対する薬物療法の選択肢としては、忍容性・安全性を含めた臨床的な見解とともに、費用対効果も加味した上での薬物療法の第一選択が提示されている(1.6 重度のうつ病の新エピソードに対する治療)。

今後の改訂に関しては、推奨に影響を来し得る新たなエビデンスが得られた際に再評価を行うとしている。

 

ポイント監修Drに訊く ここがポイント

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●    おそらく精神科専門医だけでなく、一般医師、一般身体科医も含めた医療全体に関するようなガイドラインであることから、軽症のうつ病には薬物治療を用いないことや、治療の選択について患者と議論して希望を聞き取るなどのSDMの重要性が記載されています

●    イギリスの保険診療システムでは最初から専門医が診療しないシステムなどもあるので、GPの人が読んでも対応できるようなガイドラインになっています

●    NICEは医療経済の視点を加味したガイドラインであり、増分費用効果比 (ICER) を算出することによる費用対効果も検討されています

 

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