デジタルテクノロジー、ピアサポート、臨床トリアージを組み合わせた統合失調症の再発予防に対する介入は実行可能

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

統合失調症再発の初期兆候をモニタリングするデジタルテクノロジーにピアサポート(同様の立場にいる人による支援)と臨床トリアージを組み合わせることで、再発を検出し予防できるかを検討する多施設共同実現可能性クラスターランダム化比較試験の結果が、「The Lancet Psychiatry」2022年6月号に掲載された1

英グラスゴー大学のAndrew I. Gumleyらは、精神病の再発を防ぎ、患者のウェルビーイング、活動への積極的な関与、回復を促すために初期兆候をモニタリングすること(Early signs Monitoring to Prevent relapse in psychosis and prOmote Well-being, Engagement, and Recovery;EMPOWER)の有効性を、通常の治療との比較で検討した。目的は、本格的なランダム化臨床試験を実施するための前提として、この介入法の実行可能性を示すことだった。

対象者は、英グラスゴー6カ所と豪メルボルン2カ所の計8カ所の地域精神保健サービス(community mental health services;CMHS)を利用している患者のうち、統合失調症またはその関連疾患の診断が確認され、かつ過去2年間での再発歴を持っていた16歳以上の73人(男性51%)。これらの対象者は、EMPOWERの介入群(42人)と通常治療群(31人)にランダムに割り付けられた。EMPOWERによる介入は、警戒すべき初期兆候を積極的にモニタリングするためのスマートフォンアプリの使用に、自己管理を促すためのピアサポート、再発防止へのアクセスを促すための臨床トリアージを組み合わせたものだった。

EMPOWER群の中で実際にアプリを設定したのは41人で、うち33人(81%)が4週間のモニタリング期間を完了した。これら33人の中で、12カ月後の時点でアプリの実行可能性の基準として設定した「毎日のモニタリング(質問票への回答)を33%以上遵守」を満たしたのは30人(91%;EMPOWER群全体では71%)で、アプリの使用期間の中央値は31.5週間(標準偏差14.5週間)であった。

有害事象は、EMPOWER介入群で19人(45%)に29件(うち11件は重篤な有害事象)、通常治療群で10人(32%)に25件(うち15件は重篤な有害事象)生じた。EMPOWER介入群でアプリに関連した有害事象は11人に13件生じ、そのうちの1件は入院を要する深刻なもので、原因の一部はアプリインストール時の被圧倒感であった。Fear of Recurrence Scaleで評価した12カ月後時点での再発に対する不安は、EMPOWER群の方が通常治療群よりも低かった(平均差−7.53、95%信頼区間−14.45〜0.60、Cohen’s d −0.53)。

著者らは、「今回の研究により、ピアサポートと臨床トリアージを組み合わせたデジタルテクノロジーで統合失調症やその関連疾患の再発の初期兆候をモニタリングして検出し、再発を防止しようとする介入法は実行可能であり、患者にも受け入れられるものであることが明らかになった。この結果は、今後、本格的なランダム化比較試験を実施する価値があることを示すものだ」と述べている。

なお、1人の著者が医療テクノロジー業界との、また別の著者は製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年5月24日)

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参考文献

  1. Gumley AI, et al. The Lancet Psychiatry 2022 Jun;9(6):477-486.