統合失調症の背景にある120の遺伝子を発見

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

統合失調症に関連する遺伝子120個を発見したとの研究結果が、「Nature」2022年4月21日号に掲載された1。シャリテ・ベルリン医科大学(ドイツ)のVassily Trubetskoyらによる報告。

過去の研究では、統合失調症に関連する対立遺伝子を持つ多くの遺伝子座が見つかっている2。しかし、その関連性の原因をもたらす変異が何なのか、その変異がどのように作用するのかは不明のことが多かった。そこで今回の研究では、統合失調症に関する最大規模のゲノムワイド関連分析(GWAS)で重要な変異を検索し、さらに発症に関わる遺伝子や生物学的経路についても調査した。

GWASでは、まず精神医学ゲノミクスコンソーシアム(PGC)と9件のコホート研究のデータを統合し、マイナーアレル頻度(MAF)1%以上の一般的な一塩基多型(SNP)について解析。その結果をdeCODE geneticsのデータでさらにメタ解析した。統合失調症患者76,755人、比較対照群243,649人を対象とした2段階GWASを実施した結果、287個の遺伝子座で有意なSNPが見つかった(P<10-5)。中枢神経系の興奮性ニューロンおよび抑制性ニューロンで発現する遺伝子では関連性が特に強く認められ、他の細胞や組織で発現するニューロンではこうした現象は見られなかった(参考文献1Figure4a、4bおよびSupplementary Figure 3参照)。このことから、統合失調症の病理では中枢神経系のニューロンが最も重要だと示唆された。

次に、ファインマッピングおよび遺伝子発現解析、機能・ゲノムのアノテーション解析を組み合わせて、重要性の高い変異や遺伝子を検索した。その結果、統合失調症に寄与する可能性の高い遺伝子120個が特定された。そのうち106個はタンパク質をコードしていた。コードされたタンパク質のうち、15個はシナプス関連で、うち7個はシナプス後、5個はシナプス前と後、2個はシナプス前のものであった。コードされたタンパク質を分類すると、これらの遺伝子はシナプスの組織化や分化、伝達といった過程に関わっていた。

Trubetskoyらは「今回の研究は最大規模のものであり、統合失調症に関連する遺伝子座を大幅に増加することができた。また、統合失調症におけるニューロンの機能異常は脳の一部に限られたものではなく、多くの領域で生じていることが示唆された。このことは、統合失調症では広範囲に及ぶ認知障害、多岐にわたる精神病理が認められることの理由を説明している可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2022年4月7日)

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参考文献

  1. Trubetskoy V, et al. Nature. 2022 April;604(7906): 502-508.
  2. Lam, M. et al. Nat. Genet. 2022;51: 1670-1678.