APA-Clinical Practice Guideline for the Treatment of Depression Across Three Age Cohorts

名称

Clinical Practice Guideline for the Treatment of Depression Across Three Age Cohorts
 

対象疾患

うつ病
 

最新版

2019年版
 

ガイドラインURL/書誌事項

https://www.apa.org/depression-guideline/guideline.pdf(2025年10月24日閲覧)

作成主体

American Psychological Association
(米国心理学会)

American Psychological Association(APA)は、臨床医や研究者、教育者、学生をはじめとする約172,000名の会員を擁する、米国における心理学の主要な学会である。心理学と心理学の知識の進歩、普及、応用を促し、社会に貢献するとともに人々の生活を向上させることを目的としている。研究論文の執筆やフォーマットに関するガイダンスとして知られる“APA style”を提唱しているのも、この学会である。

APAは“Evidence-Based Practice”の概念を心理学の分野においても実践すべく、患者の特性、文化、および嗜好を踏まえ、利用可能な最良の研究と臨床専門知識を統合させる施策を策定した。多文化、性的マイノリティを含め、特定の集団や分野ごとの心理療法の実践に焦点をあてたガイドラインや、特定の疾患や病態に対する治療や臨床上の注意事項などについての具体的な推奨事項を示すガイドラインを提唱している。特に前者は疾患の治療に重点を置いている臨床ガイドラインとは異なるものである。心理学的評価、診断、症例形成、予防、治療、心理療法、コンサルテーションなどについて幅広く網羅しており、患者の特性、文化、嗜好を統合し、患者にとって最良の結果を達成するための意思決定プロセスなどについて議論されている。各種ガイドラインは、以下のURLから参照可能である。

https://www.apa.org/practice/guidelines(2025年10月24日閲覧)

 

作成主体URL

https://www.apa.org/(2025年10月24日閲覧)

アメリカ合衆国

 

概要(作成背景、プロセス、予定等)

APAのうつ病に対するガイドラインは、小児および青年、成人、高齢者(60歳以上)の3つのコホートを対象とし、A Measurement Tool to Assess Systematic Reviews(AMSTAR)等を用いた評価により品質基準を満たしたシステマティックレビューに基づいて治療の推奨事項を提供している。具体的には、心理療法および補完的な代替医療の有効性、薬物療法と併用した場合の心理療法の有用性、薬物療法の有効性などについて記されている。うつ病治療ならびに生物統計学または方法論に関する専門知識を有する様々な専門分野(心理学、社会福祉、精神医学、総合内科など)の研究者および臨床医などの様々な分野の専門家から構成される委員会を設立し、Population, Interventions, Comparators, Outcomes, Timing, and Settings (PICOTS)フレームワークを用いて包括的な文献レビューを実施した。

 

本ガイドラインでは、以下のような内容について議論されている。
1.小児および青年、成人、高齢者(60歳以上)それぞれに対する治療法
2.ガイドライン作成にあたっての方法論
3.治療にあたっての注意事項(インフォームドコンセントなど)
4.他のうつ病診療ガイドラインとの比較

 

うつ病に対する薬物療法関連としては、成人うつ病患者に対する初期治療として医師は心理療法または第二世代抗うつ薬のいずれかを提案すること、併用する場合には認知行動療法または対人関係療法と第二世代抗うつ薬を併用することを推奨している。初期治療として用いた抗うつ薬により十分な効果が得られない場合には、認知療法への切り替えや他の抗うつ薬への切り替えを推奨している。

 

 

ポイント監修Drに訊く ここがポイント

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●    米国心理学会が策定した臨床実践ガイドラインであり、おなじAPAでも米国精神医学会(American Psychiatric Association)とは別組織である点に留意が必要です
●    うつ病、持続性抑うつ障害、閾値下うつ病を対象とし、10件のシステマティックレビューおよびメタアナリシスに基づくエビデンスにより作成されており、オリジナルでシステマティックレビューはメタアナリシスは行っていません
●    特徴は、治療推奨の中心に心理療法(psychological treatments)を据えている点である。これは発行団体が心理学者の専門組織であることに由来し、特に認知行動療法や対人関係療法などが複数の年齢群で高く評価されています。薬物療法や補完代替療法との比較・併用も含め、多様な介入法に対する包括的な推奨がなされています
●    図表の掲載は限定的であるため、臨床における即時的な「How to」の参照資料としてではなく、理論的・概念的理解を深める目的で読み込む形式のガイドラインと位置付けられます

 

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