統合失調症における運動の意義 - 汗は不要?

統合失調症において心肺機能と認知機能が関連する1,2ことが知られています。しかし、運動の効能は、単に患者が健康になることによる認知機能の改善なのでしょうか。それとも他の理由があるのでしょうか。

身体的な運動(Physical Exercise:PE)による精神疾患患者の認知機能の改善は、認知リハビリテーション研究においてとても興味深い研究領域のひとつです1。これは、認知機能が精神疾患患者の社会的機能の強力な予測因子であり、重要な介入対象となるためです1

運動量が多いほど認知機能を改善する傾向

統合失調症を対象としたPEの検討がなされた10試験385例によるメタ解析で、認知機能への影響が検討されています。運動介入群とコントロール群に認知機能の各検査ドメインの平均変化スコア(SD)について効果量Hedges’gを求めました(Comprehensive Meta-Analysis2.0、研究間不均一性:ランダム効果モデル)。その結果、全般的認知機能(g:効果量=0.33, 95% CI = 0.13-0.53、P = .001)、ワーキングメモリー(g=0.39、P =0 .024)、社会的認知機能(g=0.71、P =0 .002)及び注意(g=0.66、P = 0.005)において有意な差がみられました。また、より多くの運動量が課せられた場合に認知機能が改善する傾向がみられました(9試験;n = 344、B = 0.0054、SE = 0.0029、Z = 1.85、P = 0.065;メタ回帰分析)2

統合失調症において心肺機能と認知機能が関連することが知られています。しかし、この現象の根源的な理由は何でしょうか。単に患者が健康になったということ以外に何かあるのでしょうか。

最近のある研究によれば、統合失調症スペクトラムにおけるこの心肺機能と認知機能の関係は、心肺機能の程度にかかわらず、より早い発達段階で生じている可能性が示唆されました3。この研究では、認知機能が、脳由来神経栄養因子(BDNF)、その前駆体であるproBDNFまたは現在の身体活動レベルと相関するかについて検討されましたが、明らかな関連はありませんでした。

ソファで有酸素量を増加・改善?

一方で、有益な効果を引き出すためには運動すらも必要ないかもしれません。16人の患者を対象とした小規模研究で、アクティブプレイのビデオゲームが統合失調症患者の有酸素能力を高める可能性があることを示す興味深い結果が示されました4。こうした「治療レジメン」は、患者にとって受け入れやすく、楽しめるものであり、参加遂行率も約80%と良好であったことから、患者がソファで有酸素能力を改善または補完しうるのではないかと示唆されます。

しかし、その場合、一体何が起こっているのでしょうか。

ロケット科学ではなくfMRIで!

Orlovらは概念実証(PoC)試験として、磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて脳血流の変化に基づく脳活動のリアルタイム解析を行いました5。このときfMRIを、ロケットの着陸を行うコンピュータゲームとリンクさせ、患者の脳活動とロケットの動きを連動するようにしました。

幻聴(AH)を有する統合失調症の患者11例に、なんとか工夫してロケットを着陸させる(つまり自分の脳活動をコントロールする)様にさせました。患者への指示は一切与えられませんでした。その結果、患者全員が成功したわけではないものの、成功した患者では言語関連領域である側頭回(TG)の活動低下が認められました。評価尺度である精神病症状評価尺度(PSYRATS)の得点も改善し、AHの頻度低下が見られました。

また、リアルタイムfMRIニューロフィードバック(rt-fMRI NFB)技術(機能的なタスクと瞑想)を用いた2報告でもAHの頻度を低下させることに成功しました6, 7。Okanoらの報告6では、rt-fMRI NFBの21分のセッション1回で効果を得るのに十分であることが示されました。

脳トレーニングは陽性症状の頻度を減らす可能性が

このように、身体的訓練だけでなくメンタルの訓練でも統合失調症の陽性症状の一部を改善するのに役立つ可能性が様々示されてきています。

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.

参考文献
  1. McCleery A, Neuchterlein KH. 2019;21:239-248
  2. Firth J, et al. Schiz Bull 2017;43:546-556
  3. Holmen TL, et al. Front Psychiatry 2019;10:7895. doi 10.3389/fpsyt.2019.00785. eCollection 2019
  4. Kimhy D. Psychiatric Services 2016;67:240-243
  5. Orlov N. Translational Psychiatry 2018 12;8(1):46. doi: 10.1038/s41398-017-0067-5.
  6. Okano K, et al. Psychiatry Res 2020;286:112862. doi: 10.1016/j.psychres.2020.112862. [Epub ahead of print]
  7. Bauer CCC, et al. Psychiatry Res 2020; 284:112770. doi: 10.1016/j.psychres.2020.112770. Epub 2020 Jan 14
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