精神医学は常に2つのアプローチを持ちます。1つはそのほかの臨床家の医師と同じく「早く元気にすること」です。もう1つは長く診ることであり、そのために「病後の生活史」の形成に関心を持つことがひとつの戦略と思います。

精神医学は常に2つのアプローチを持ちます。1つはそのほかの臨床家の医師と同じく「早く元気にすること」です。もう1つは長く診ることであり、そのために「病後の生活史」の形成に関心を持つことがひとつの戦略と思います。

補講の最後として、私の考えをお伝えしたいと思います。

私は、長い経験から、軽症うつ病のみならず、統合失調症さえも、丁寧に診続けていけば想定していた以上に良くなることが期待できると思います。長年診察を続けていれば、患者さんの自殺といった悲劇に遭遇することもあります。これだけは避けたい。しかし、難しい。長く診ているとそういうこともあります。

「長く診続けることに何の意味があるんだ」とおっしゃる方もいるかもしれません。しかし、精神疾患とはそういうものです。精神科医は、したがって「長く診る」のが普通です。「すぐに良くなる」ことはまれで、それはたまたまの幸運であり、例外的なことです。したがって、こうも言えるかもしれません。精神科医も内科や外科と同様に、今日では「早く良くする」ことが目標になったが、依然としてなかなか良くならない手強い相手がいて、今のところ薬を使いながら「長く診る」しかありません。これは、精神科のみならず、小児科や神経内科共有の方法でしょう。その中では精神科は多彩な可能性を蔵しています。今までの教科書はあまりに悲観論に傾きすぎたのではないでしょうか。薬という治療手段が加わった今日、もうちょっと楽観論に組してもよいのではないでしょうか? コメディカルが治療参画して下さろうとする今は、我々も少し楽観論に傾いても許されるのではないのでしょうか。ただし、決して手放しでの楽観論ではありません。随分長い間、苦闘してきた上での楽観論です。

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取材/撮影:ルンドベック・ジャパン Progress in Mind Japan RC
取材日:2022年7月27日(水)
取材場所:ヒルトン名古屋(愛知県名古屋市)

 

本コンテンツ弊社が事前に用意したテーマに沿ってご意見・ご見解を自由に執筆いただき、可能な限りそのまま掲載しています。お話の内容は、すべての患者様や医療従事者に当てはまるものではなく、またそれらの内容は弊社の公式見解として保証するものではありません。また、記載されている臨床症例は、一部であり、すべての症例が同様な結果を示すわけではありません。