スマホアプリが一部の双極性障害患者の再発リスクと躁症状の重症度を低減か

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

スマートフォン(以下、スマホ)の自己管理アプリを利用した介入により、双極性障害患者全体としての再発リスクは低減できないものの、無症状回復した患者においては、再発リスクおよび躁症状の重症度を有意に低減できる可能性が、「JAMA Psychiatry」に2022年12月21日掲載された論文で報告された1

米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のEvan H. Gouldingらは、双極性障害患者における良好な状態を維持するための介入策として、スマホの自己管理アプリLiveWellの有効性を検討した。対象は、双極I型障害であって、過去2年間に最低1回の気分エピソード(抑うつ、躁状態、軽躁病、またはその混合)が生じ、現在、精神科医または精神科診療看護師のケアを受けている18〜65歳の患者205人(平均年齢42歳、女性61%)であった。

対象者は、通常のケアを受ける群(対照群、81人)と通常のケアに加えてLiveWellを用いた介入を受ける群(介入群、124人)にランダムに割り付けられた。それぞれの群は、研究開始時の再発リスク(低リスク:無症状回復、高リスク:症状が継続・悪化の兆候あり・回復途中・有症状回復)に基づき、16週間追跡された。介入群は試験開始時にコーチと対面でアプリの使い方を教わり、6回の電話を受け、双極性障害の自己管理に関する情報を読むなどしたほか、アプリに毎日チェックインした。アプリからは、対象者の状態に応じたフィードバックや、良好な状態を維持するための個々人に合ったプランを作成するための情報が提供された。コーチによるサポートも行われ、また自らが報告したデータのまとめ、および注意もウェブ上で提供された。

主要評価項目は再発までの時間、副次評価項目はpercentage-time symptomatic(研究期間中に症状のあった日を研究期間の総日数で割ったもの)、症状の重症度、QOLとした。症状としては、躁症状と抑うつ症状を取り上げ、それぞれヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale;YMRS)と簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology;QIDS)で評価した。QOLはWHOQOL-BREF(World Health Organization Quality of Life Questionnaire – BREF)で評価した。

再発までの時間をカプランマイヤー法でグラフ化して比較したところ、全体としては両群間に有意差は見られなかった(ログランク検定、P=0.08)。しかし、リスク群別に見たところ、低リスク群では再発までの時間が有意に長く、再発リスクは低下していることが判明した(同、P=0.02)。高リスク群では、有意差は認められなかった(同、P=0.62)。同様にCox比例ハザードモデルにより検討したところ、全体としての再発リスクに差は認められず〔ハザード比(HR)0.65、95%信頼区間(CI)0.39-1.09〕、低リスク群ではHRは有意に低下していたが(同0.32、0.12-0.88)、高リスク群では有意な低下は認められなかった(同0.86、0.47-1.57)。

副次評価項目の躁症状の重症度については、「介入・対照群」、「再発リスクの高低」、および「時間」との間に相互作用が認められた。一般化線形混合モデルによる解析では、低リスク群において躁症状の重症度が低減するという介入効果が認められたが〔YMRSスコアの平均(SE)差:−1.4(0.4)点、P=0.001;Cohen’s dは8週で0.07、16週で0.67、24週で0.51、32週で0.10、40週で0.16、48週で0.91〕、高リスク群では認められなかった〔同0.0(0.3)、P=0.95;Cohen’s d=0〕。抑うつ症状の重症度とQOL、percentage-time symptomaticについては、「介入・対照群」、「再発リスクの高低」、および「時間」との間に相互作用は認められず、QIDSスコアとWHOQOL-BREFスコアは介入群でのみ有意に低下していた〔QIDSスコア:平均(SE)差−0.80(0.34)点、P=0.02;Cohen’s d=0.20、WHOQOL-BREF:同1.03(0.45)、P=0.02;Cohen’s d=0.30〕。

著者らは、「スマホによる介入をどのような形にするのが最も良いのか、またこの介入方法が無症状回復の人の再発リスクを低下させることが確実なのかを調べるためには、なお研究を重ねる必要がある」と述べている。

なお、複数の著者が、製薬企業、テクノロジー企業、および出版社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年12月21日)

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参考文献

  1. Goulding EH, et al. JAMA Psychiatry. Published online December 21, 2022. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2022.4304