慢性的・重篤な孤独感を有する割合に国・地域間で差、100カ国超のメタ解析

重篤な孤独感に苦しむ者の割合には地理的な傾向があり、欧州諸国の中では北欧地域で年齢を問わず少ない傾向があるとの研究結果が、「BMJ」に2022年2月9日掲載された1

シドニー大学(オーストラリア)のDaniel L Surkalimらは、問題となるような孤独感の蔓延について、世界各国におけるデータの有無、国・地域間の差や特徴を明らかにするため、2000~2019年に行われた各国を代表する観察研究に関する系統的レビューを実施。113カ国・地域の研究57件を特定した。

これらの研究では、孤独感を尺度または単一質問のいずれかで評価していた。尺度で測定した場合、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)孤独感尺度またはde Jong Gierveld孤独感尺度のいずれかを使用していた。単一質問で測定した場合、通常は「どのくらいの頻度で孤独だと感じるか?」といった質問が設けられていた。今回の解析では、尺度による結果と単一質問の結果は別々に検討し、さらに慢性的、重篤な孤独感のデータのみに焦点を当てた。研究24件から推定された106カ国における慢性的、重篤な孤独感を有する割合(以下、孤独感の割合)212個について、各地域および年齢層ごとにデータをプールし、ランダム切片一般化線形混合効果モデルを用いたメタ解析を実施した。

思春期(12~17歳)における孤独感の割合のデータは、WHO地域割の全地域で存在しており、68カ国で推定された孤独感の割合76個を解析した。孤独感の割合は東南アジア地域の9.2%(95%信頼区間6.8-12.4)から東地中海地域の14.4%(同12.2-17.1)までの幅が認められた。ただし、全ての地域で高い異質性が認められた。各国の所得レベルによる明確なパターンは見られなかったが、アフリカ地域と南北アメリカ地域では国の所得グループによる有意なサブグループ効果が検出された(P<0.05)。

成人期以降、特に若年・中年成人期については欧州以外のデータが乏しいため、主に欧州地域で検討した。欧州の中では、どの年齢層でも地域的に似通ったパターンが認められた。若年成人期(18-29歳)については、30カ国で推定された孤独感の割合33個を解析した。データのばらつきは大きかった(τ2=0.280、P<0.01)。孤独感の割合は、最も高い東欧地域の7.5%(同5.9-9.4)から最も低い北欧地域の2.9%(同1.8-4.5)まで、サブグループ間で有意な差が認められた(P<0.01)。中年成人期(30-59歳)については、32カ国で推定された孤独感の割合35個を解析した。データのばらつきは大きかった(τ2=0.483、P<0.001)。孤独感の割合は、東欧地域の9.6%(同7.7-12.0)および中央・西アジア地域の9.8%(同5.1-18.0)から北欧地域の2.7%(同2.4-3.0)まで、サブグループ間で有意な差が認められた(P<0.01)。高齢期(60歳以上)については、30カ国で推定された孤独感の割合43個を解析した。データのばらつきは大きかった(τ2=0.461、P<0.01)。孤独感の割合は、東欧地域で21.3%(同18.7-24.2)と最も高く、南欧地域の15.7%(同13.2-18.7)、西欧地域の8.7%(同7.3-10.5)と続き、北欧諸国で5.2%と最も低く(同4.2-6.5)、サブグループ間で有意差があった(P<0.01)。

孤独感の時代的な変化について、デンマークの子ども(11-15歳)を対象とした研究では、孤独感の割合は1991年の4.4%(同3.4-5.4)から2014年には7.2%(同6.4-8.0)に上昇していた(P<0.001)。同様にノルウェーの高校生でも、2014年の9.0%(同8.5-9.5)から2018年の12.1%(同11.7-12.5)へと、孤独感の有意な増加が認められた(P<0.001)。ただし、世界規模での時代的な変化を結論づけるにはデータが不十分であった。

Surkalimらは、「低・中所得国では国全体を代表するようなデータがないなど、高所得国との資料的な格差は小さくなかった。しかし、問題となるような重篤な孤独感は、多くの国や地域でかなりの割合の者が経験しているであろう」とし、「孤独感の評価は、標準化かつ確立されたツールを使い、通常のヘルスケアの一環としてより広い地域、年齢層を対象に実施されるべきである」と結論付けている。(編集協力HealthDay)

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参考文献

  1. Daniel L Surkalim, et al. BMJ 2022 Feb 9;376:e067068.