うつ病診療ガイドライン一覧 ~臨床医が知っておくべきポイント~
うつ病は、患者の増加とともに社会の関心もかつてないほど高まっています。このような背景を踏まえて、行政ではさまざまな対策が、臨床の現場では新たな治療選択肢の開拓が行われています。
うつ病に対する薬物療法ひとつをとっても、1950年代にイミプラミンが抑うつ症状の改善効果を有することが認められ、薬物療法が行われるようになってから、今日までにさまざまな種類の抗うつ薬が上市され、治療の選択肢が広がってきました。以前は、主導的立場にある医師の意見が強く反映された治療が一般に広く用いられていましたが、質の高い医療を求める社会的な意識の高まりとともに、うつ病治療においても「根拠に基づく医療(evidence-based medicine;EBM)」が重視されるようになりました。EBMは、いまや現代の医療の基本的な考え方となっています。そして、エビデンスを臨床現場に伝える役割を担う診療ガイドラインが、さまざまな学術団体や行政機関などにより提唱されてきました。国内では、日本うつ病学会(JSMD)が提唱する『日本うつ病学会治療ガイドライン』1において、うつ病に対する治療選択とともに、併存し得る疾患との鑑別診断などが言及されています。また、現在(2025年9月時点)、最新のエビデンスを加味した2025年版の完成に向けた作業が大詰めを迎えています。海外に目を向けると、臨床学的視点のみならず医療経済的視点からの記述がなされているものなど、さまざまな特徴を持った診療ガイドラインが発表されています。これらのガイドラインを適切に利用し、個々の患者に最適な判断をすることによって、治療選択の意思決定が円滑になり、ひいては転帰の向上も期待されます。
本コンテンツでは、国内外で発表されているうつ病ガイドラインの概要を紹介します。日本における臨床状況を考慮して提唱されている『日本うつ病学会治療ガイドライン』を基本としつつ、海外で提唱されているガイドラインも併せて参照することで日常臨床の幅を広げられるのではないかと思います。ご興味のあるガイドラインが見つかりましたら、ぜひ本文にアクセスし、一読されてみてはいかがでしょうか?
| 作成主体(略号) | 国 | ガイドライン名称 | 作成主体URL | 概要・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| APA | US | Practice Guideline for the Treatment of Patients with Major Depressive Disorder Third Edition | URL | 詳細 |
| APA (Psychology) | US | Clinical Practice Guideline for the Treatment of Depression Across Three Age Cohorts | URL | 詳細 |
| CANMAT | CA | Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments 2023 Update on Clinical Guidelines for Management of Major Depressive Disorder in Adults (CANMAT 2023) | URL | 詳細 |
| Maudsley | UK | The Maudsley Prescribing Guidelines in Psychiatry/The Maudsley Deprescribing Guidelines: Antidepressants, Benzodiazepines, Gabapentinoids and Z-drugs | URL | 詳細 |
| NICE | UK | Depression in adults: treatment and management | URL | 詳細 |
| RANZCP | AU/NZ | The 2020 Royal Australian and New Zealand College of Psychiatrists clinical practice guidelines for mood disorders | URL | 詳細 |
| WFSBP | US | World Federation of Societies of Biological Psychiatry (WFSBP) Guidelines for Biological Treatment of Unipolar Depressive Disorders | URL | 詳細 |


